佐倉の桃源。

佐倉は、少し遠いし不便だし。また、そこからバスで行くなんて。本数もあまりないし。さらに、・・・・・。
そういう所に、DIC川村記念美術館はある。私も、久しぶりで行った。おそらく、7〜8年ぶり。
1月末、千葉市美術館での「マルセル・デュシャンと瀧口修造」展の折り、週末のみ、千葉市美術館と佐倉のDIC川村記念美術館の間にバスが出た。往復無料、しかも、お互いの入場料の割引もあり、というもの。どうも、”デュシャンと瀧口”展に、川村記念美術館の収蔵作品も貸し出していた模様。それで、便宜を、となったもののようだ。千葉から川村美術館へ直接行けるなんて、とてもいいこと。それを利用した。

このような小さな看板が迎えてくれた。
ペンキの剥げ具合、味がある。

敷地内に入り暫らく進むと、美術館が見えてくる。樹の間から、サイロのようなトンガリ屋根が。
DIC川村記念美術館、3万坪の庭園内の一角にある。

DIC株式会社、インキ会社である。その分野での世界企業であるようだ。
潤沢な資産を持っているのであろう。広い庭園を造り、凄いコレクションを収集した。その集めぶり、凄く趣味がいい。ただ、金をかけているだけではない。だから、佐倉の桃源郷とも思える場所となった。

池には、白鳥も泳いでいる。

美術館入口左の、清水九兵衛≪朱甲面≫。
鋳造アルミニウム、ステンレススチール、コンクリート、アクリルを使った作。

入口の右手には、フランク・ステラ≪リュネヴィル≫。
ステンレススチールとアルミナブロンズでの作。

収蔵点数は、さほど多くはないのでは、と思うが、レンブラント、ルノワール、モネ、ピカソ、・・・・・、凄い作品が並んでいる。
特に力を入れているのは、20世紀のアメリカ美術。なかんずく、フランク・ステラ、マーク・ロスコ、バーネット・ニューマン。
上は、フランク・ステラの大型作品群。
もちろん、写真は、川村記念美術館のパンフレットの写真を複写したもの。この後の2枚の写真も、同じである。念のため。

バーネット・ニューマンの≪アンナの光≫。
カンヴァスにアクリル。大きな作品だ。天地276センチ、左右611センチある。
この部屋には、正面に、鮮やかな赤一色の作品、ただ1点だけが展示されている。「ニューマン・ルーム」だ。左右は、湾曲したガラス窓。内側に紗のようなカーテンがかかっているので、外側の光景が、ボウと白く見える。
タイトルの”アンナ”は、作者の母親の名だそうだ。が、赤一色の巨大な作品、存在を超えた存在、とでもいう意を持たせたか。

「ロスコ・ルーム」だ。
マーク・ロスコの≪シーグラム壁画≫7点だ。
何故、佐倉に桃源があるのか。その多くは、「ロスコ・ルーム」の存在にある。
1月末、その「ロスコ・ルーム」に入った時、何かンゥ、という感じがした。以前とどこか違う。以前と部屋の感じが違う。包まれるような感じがする。係の人に聞いた。4年ほど前、美術館は改築され、「ロスコ・ルーム」も新たに増築された、という。
だからだ。よりコンパクトになった感じがする。部屋が四角ではない。七角形だ。DIC川村記念美術館が持つ≪シーグラム壁画≫、7点であるから、各面に1点となる。
茶色というか、赤というか、黒いというか、マーク・ロスコの色と形だ。何と言えばいい。
変形の七角形、左右が広く、奥行きがやや狭い。微妙な形をしている。おそらく、この比率しかない、という絶妙な形を割りだしたのであろう。たしかに、包まれる。その空間の”気”に包まれるような感じを受ける。
中央部に置かれたソファも、これも絶妙な形と高さ。チャペルとなった。瞑目、瞑想している人を見かけるのは、当然か。
私は、そこまではいかない。打たれもし、惹かれもするが。でも、桃源であることはたしか。