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年寄りばかりが癌になるわけじゃない。若者も子供も癌になる。
シアトルの27歳の若者・アダム、癌を宣告される。5年生存率50%だ、と医者は言う。

アダム、酒もタバコもやらない実直な男。どちらかと言えば、草食系。気の毒だ。しかし、なってしまったものは仕方がない。

恋人のこと、家族のこと、友だち、仕事、その他諸々、そりゃさまざま考えるよ。でも、くよくよしたって始まらない。そういう映画に仕立ててある。厳しい状況だ。しかし、明るい。笑わせもする。脚本を担当したウィル・レイサーの実体験に基づいているそうだ。

監督は、ジョナサン・レヴィン。とてもハートフル。上質のエンタテインメント作品だ。
「人生、あきらめるには早すぎる」、なんてこと言われてもな。生存率50%の27歳の男なんだから。抗癌剤の治療で通っている病院でいつも一緒になる男が、突然いなくなる。治療を受けた後、いつもバカ話をしていた男が。癌という病、厳しい。
イライラもする。同棲していた絵描きの恋人を追い出しもする。整理のできない女で、他の男とキスしている場を目撃してしまった、ということもあるのだが。女には女で、それなりの理由もあるのだが。いずれにしろ、その大本には、生存率50%の癌がある。
医者にセラピストを紹介される。訪ねて行くと、新米セラピスト。若い女の子で、経験不足もいいとこ、頼りない。でも、可愛いところのある女の子。
息子の生存率50%を知った母親も出っ張ってくる。私が同居する、と。地球上どこの国でも、おっかさんはみな同じ。変わらない。
中でも、アダムのことをどうこう、と思っているヤツは、友だちのカイルという男。身体のデカイ、顔もやや壊れた男。アダムとは正反対の男だ。頭の中の8割方は、いかに女の子を引っかけるか、ということで占められているノーテンキな男。コイツがいい。とてもいい。
「お前、癌患者はモテるんだ」、と言ってアダムをけしかけ、女の子を引っかける。成功率も高い。ノーテンキなカイル、アダムにこうも言う。「50%の確率なら、カジノならバカ勝ちだぜ」、とも。持つべきものは友。ノーテンキなカイル、いいヤツだ。

そうは言っても、生存率50%の厳しい現実、その状況は変わらない。しかし、決して暗くはない。アダムの境遇に思いを寄せもするが、笑いもする。
ラストがいい。アダムとカイルがいるところへ、頼りないが可愛いセラピストの女の子が訪ねてくる。アダム、「出てってくれ」、と言ってカイルを追い出す。カイル、ニヤリと出ていく。いいヤツだ。
後は、知らない。心に温かい余韻を残してこの映画は終わる。
12月初めの頃かかっていた映画だ。まだ、どこかでやっているかもしれない。とても上質な映画である。その頃から近日までに観た映画何本かについて続ける。上質のものばかりではないが。