行政、学者、産業界。

今日、国の原子力安全委員会の耐震設計特別委員長を務める人が、「想定超えは常にあり得るという設計思想が、津波に対しては浸透していなかった。責任を感じている」、と語っている。
原子力安全委員会のHPを見ると、この組織、国に対しての勧告、産業界に対する指導、強い権限を持っている。耐震設計特別委員長を務めるこの京大名誉教授も、原発の耐震設計審査指針や、既存原発の耐震性再確認の手法を検討した、強震動地震学の専門家だそうだ。
「起こり得ないことまで考慮していると、キリがない」、という作る側の反発もあり、「コンセンサスをとるのが難しかった」、とも語っている。そうだろう、と思う。
今日、古い友人のOから、去年の11月7日の朝日に、”宮城、茨城に、巨大津波が数百年おきに発生?”、という記事がある、というメールがきた。O、私の友だちの中では、真面目なことでは一、二を争う男。地域の世話役もしており、今日も街頭募金に立っていた、という。エライ男だ。それはともかく、朝日を見てみたら、産業技術総合研究所の調査のことが載っている。
産業技術総合研究所のHPを見てみた。
経産省所管の独立行政法人。総職員数3000名、内、研究者は2000名以上。主たる研究施設は、つくばにある。「日本の産業を支える最大級の公的研究機関」、と謳っている。中に、”活断層・地震研究センター”、というものがある。
ずっとその分野の調査研究を行っているようだが、平成12年からは『活断層・古地震研究報告』、というものを発表している。地震国・日本のあちこちの調査、研究を。さまざまなシミュレーションも行っている。
例えば、3年前の2008年の第8号では、「石巻・仙台平野における869年、貞観津波の数値シミュレーション」、というものを発表している。その他にも。研究報告なんてもの、読み辛いのでザッと斜め読みをしただけだが、要するに、貞観11年5月26日(869年7月9日)の津波、こういうものであったと思われる、というもの。
もちろん、警告の意もあろうし、さまざまな数値でのシミュレートをしているが、その基準は、断層の長さ200キロ、幅50キロで、今回の、長さ500キロ、幅200キロは、それをはるかに超えるものである。まさに、想定外。
過去最大と言われる、1300年前の大津波でもそうであるから、日本人の誰しも、仮に、東電の幹部であったら、「・・・キリがない」、と言わない人はいないだろう。原子力安全委員会の耐震設計特別委員長の「コンセンサスが・・・」、という言葉を批判することもできないだろう。
しかし、産業技術総合研究所のHPには、こういうことも記されている。
「産業界、大学、行政との有機的な連携を行い、・・・・・」、というような文言が。この文言は、訂正した方がいい。”有機的”を、”無機的”にするか、”有機的”を残すなら、”連携を行わず”、にするかに。いずれにしろ、調査、研究の成果、生かされていないのだから。
Oからのメールが来たから、たまたま産業技術総合研究所なんてところのHPを見、こんなことを書いてしまった。
しかし、行政、学者、産業界、バラバラでこういう事態になったからと言って、今、そのことを批判すべきじゃない、とやはり思う。いつになるかは解からないが、そういうことは、今の事態が終息した後のこと。
今は、福島第一原発の抑えこみと、被災者の救援、支援にあたることが、すべて。