美味、東北、鎮魂。

昼、新宿で美味しい料理をご馳走になる。
夕刻前、上野の都美術館へ行く。
公園では、「全国都市緑化フェアTOKYO」、”東北の農の庭”、というものをやっていた。私は、都美術館での日本表現派展を観る。
日本表現派同人・山本宣史の今回の出品作はこれ。

タイトルは、≪仏ヶ浦・鎮魂の舞≫。F150号の膠彩画。
山本宣史の作品、国立の画廊での大掛かりな個展の模様、7月初めに紹介した。山本の膠彩画についても、その折り記した。
今回の作品の前で、作者・山本宣史に会い、話を聞く。
昨年の日本表現派展への山本の出品作は、≪浄土ヶ浜≫であった。岩手県の宮古の。昨年の大震災の後、訪れた、という。物見遊山で。
今年の”仏ヶ浦”もその時に訪れた、という。下北半島である。そういえば、≪大間のマグロ、ハーツ喰い≫なんて、おやじギャグ満開の作品も描いていたな、昨年。
いずれにしろ、東日本大震災の後、物見遊山とは言え、東北のあちこちを訪ねていること、私から言わせれば、表彰状ものである。私は、岩手県の沿岸部のみしか行っていない。山本宣史、アンタはエライ。
それにしても、今回の出展作、”仏ヶ浦”の後に、”鎮魂の舞”という言葉がついている。どういうことか。
山本宣史、「ちょっと待っててください」、と言って向こうの方へ行った。暫くして戻ってくると、コピーされた紙片を2枚くれた。
<韓国伝統舞踊家・金順子が舞う 砂雁・宋和映の世界 花草別監>、と書いてある。金順子、1945年生まれの在日2世。キム・スンジャ、と読むそうだ。
彼女の公演が、9月の中旬に催されたそうだ。山本宣史、日本表現派の先輩から誘われ、観に行った、という。いや、凄かった。感動した、という。
今回の出品作として、”仏ヶ浦”の絵はそれ以前から描いていたそうだ。それが、先月中旬、金順子(キム・スンジャ)の踊りを観て、これを仏ヶ浦の中に組み入れよう、と考えた、と山本は言う。だから、搬入ギリギリだった、とも話す。

山本宣史がそう話す金順子の踊り、このようなものであったそうだ。
”鎮魂の舞”という感を覚えた、と言う。だから、タイトルにもそれを、ということであろう。
先ほど、You Tubeで金順子(キム・スンジャ)の踊りを観た。確かに、素晴らしい。優美、典雅な舞である。
雅楽のような響きを持つものもある。また、パンソリのようなリズムとメロディーを持つものもある。その音と舞に、山本宣史が”鎮魂”を感じて不思議はない。
40年近く前、埼玉の高麗神社の境内で、サムルノリの公演を観たことがある。ファンタスティックなものであった。動的、という印象がある。しかし、つい先ほどYou Tubeで観た金順子の踊り、鎮魂、魂鎮め、タマシズメの気が横溢している。深い。
”仏ヶ浦”の凝灰岩の断崖、ごく自然に、”鎮魂の舞”と繋がる。
今日の私、美味、東北(の農)、鎮魂、となるのかな。まあ、そうであろう。