菊とギロチン。

大正12年(1923)9月1日の関東大震災の後、朴烈と金子文子は逮捕され大逆罪で死刑判決(後、天皇の思し召しとして無期に減刑。が、金子文子はそれを拒否、自死する)を受けるが、関東大震災の直後、大杉栄と伊藤野枝は甘粕正彦ら憲兵隊の手で虐殺される。
その大杉栄の仇を取る、と言っていたアナキストたちがいる。詩人でもある中浜哲(中濱鐵)や古田大次郎も。ギロチン社というアナキスト集団を作った。
明日から大相撲秋場所が始まるが、昔は女相撲の興行もあった。古くは江戸時代から。今はない。女子プロレスに変化した。
ギロチン社も女相撲も、コンサバティブな社会から見れば異端である。
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『菊とギロチン』、史実を基にしたフィクションである。
大正12年、関東大震災後の社会で蠢いていたアナキスト集団・ギロチン社の若者と女相撲に加わった女たち、この二つの集団が出会ったら、と。
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『菊とギロチン』、脚本:相澤虎之助・瀬々敬久、監督:瀬々敬久。
2018年の公開作であるが、瀬々敬久、30年来温めてきたプラン、という。
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大正Ⅰ3年、東京近郊の町に女相撲の一座がやってくる。
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女相撲の一座の相撲取り、ワケありの女が多い。
暴力を振るう亭主から逃げてきた新入りの花菊(木竜麻生)とか、元遊女の朝鮮出身の十勝川(韓英恵)とか、と。
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花菊、強くなりたいと願う。
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ギロチン社の面々と行きあう。
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国家権力に虐殺された大杉栄の仇をとろうとしているギロチン社の若者たち。
中浜哲(中濱鐵、東出昌大)は金持ちを脅して金を奪い、酒と女に費消する。古田大次郎(筧一郎)はナイーブな男。
彼ら、社会を変えたいと思っているのであるが。
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いつしか花菊と古田大次郎は惹かれあっていく。十勝川と中浜哲(中濱鐵)も。
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多くの実在の人物が登場する。
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3時間を超える長尺作品である。エンディング近く、海沿いで踊る彼らの姿が印象に残る。
その後官憲に捕まった古田大次郎は、大正Ⅰ4年10月15日、市ヶ谷刑務所で死刑を執行される。
中浜哲(中濱鐵)は、その翌年の大正Ⅰ5年4月15日、大阪刑務所で死刑が執行される。
この後、日本は天皇神聖視軍部独走の時代に入り、昭和20年の敗戦、こてんぱんにやられるまで続く。
瀬々敬久、右傾化が進む今だこそ警鐘を鳴らしたい、と語っている。
そう言えば、安倍政権支持の層、若い連中に多いそうだ。
長尺の青春群像劇、年寄りにも面白かった。