多十郎殉愛記。

舞台はやはり幕末の京。あの時代の京都は、やはり気にかかる、映像作家の心を揺らす。
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幕末の京、尊王攘夷の薩長の勤皇の志士がいる。それを取り締まる京都見廻組や新選組がいる。京都見廻組と新選組の出し抜きあい、鍔迫り合いもある。斬り切られのカオス。
1934年生まれ、昨年公開時85歳の中島貞夫、平成最後のちゃんばら時代劇、と謳う。
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『多十郎殉愛記』、監督:中島貞夫。中島貞夫、20年ぶりのメガホン。
主演の二人は高良健吾と多部未華子。
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清川多十郎(高良健吾)、長州藩では名を知られた遣い手であったが脱藩、今は京の居酒屋の用心棒である。
腕を見こまれ長州の志士からは、「桂さん(小五郎・木戸孝允)の身辺警護をしてくれ」と頼まれるが断る。尊皇攘夷の大上段に構えた志などはない。
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小料理屋の女将のおとよ(多部未華子)は、多十郎に思いを寄せている。
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多十郎、脱藩浪人の取り締まりに動く見廻組に目をつけられた。
腹違いの弟・数馬が上洛してくる。尊皇攘夷の志を持って。が、数馬は見廻組との間の戦いに巻き込まれ、両眼を切られる。
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多十郎はおとよに数馬を託し、二人を逃がす。自らの身を囮にして。
この作品、時代劇の先達・伊藤大輔に捧げられている。中島貞夫の伊藤大輔へのオマージュ。伊藤大輔の『長恨』を頭に置いているそうだ。『長恨』、私は知らないが、時代劇、ちゃんばら、三角関係という要素である模様。両眼を切られた数馬とおとよの間にも。
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京都見廻組は悪だ、薩長の志士は善だ。脱藩浪人も善だ。幕末に時代を絞ったちゃんばら時代劇、単純に善悪を分けた斬り合いがストンとくる。
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<ラスト30分壮絶な死闘に泣け!>の惹句通り、多十郎、京都見廻組と戦いをくりひろげる。多勢に無勢、アンビリーバボーな戦いを。
見廻組、3~40人いる。いや4~50人ぐらいいるかもしれない。それを多十郎ひとりで、斬って斬って斬りまくる。現実にはあり得ない。が、それが本格的なちゃんばら時代劇。
85歳の中島貞夫、それを示した。