帰れない二人。

中国は、良くも悪くも(後者の方が圧倒的に多いが)大きく動いている。
2001年、山西省の大同、チャオとヤクザ者の恋人・ビンの物語。恋物語ではあるが、激動の現代中国の中でヤクザなはぐれ者の哀しい男と女の物語。
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大同、奉節、ウルムチ、そして大同へ。広い中国大陸を移ろって行く。2001年から2017年にかけての長い年月。
この間、中国は大きく動いていた。
2000年、東部沿岸地域に比べ遅れていた西部大開発プロジェクトが始まる。
2001年、2008年のオリンピック開催地が北京に決まる。
同年、WTO(世界貿易機関)に加盟。
2006年、青蔵鉄道開通。
2008年、北京オリンピック開催。
2009年、世界最大の三峡ダム完成。
2010年、上海万博開催。
2015年、2022年の冬季オリンピック開催地が北京に決定。
2010年には、GDPが日本を抜きアメリカに次ぐ世界2位となる。その後もどんどん伸ばし、今やそのGDPは日本の3倍近くとなっている。
経済大国となるにつれ、覇権主義が目につくようになった。特に2012年に習近平がトップとなって以来。今や習近平核心体制となった。習近平が終身、死ぬまでトップを率いるという体制。アメリカと対峙する軍事強国を目指している。
少し横道に逸れたが、そのような激動の時代の中国で、男と女は離れたり引かれたり。世の中が激しく動いているからこそ、その底で蠢くはぐれ者の恋物語は心に沁みる。
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『帰れない二人』監督:ジャ・ジャンクー。
「帰れない」って、大同へ帰れないってことなんだ。17年間も。
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この二人がいい。得も言えずいい。
ヤクザ者のビンに扮するリャオ・ファン。チャオに扮するチャオ・タオ。
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2001年の大同。ディスコでは「Y.M.C.A.」が流れている。日本ではその20年ぐらい前に西城秀樹が歌っていた曲。
そう、この頃はまだ、中國は日本の20年ほど後を走っていた。それが急激に伸び、追いこしていった。
中国へは、チベットやウイグルの問題があり、「もう行くものか」と思い行かなくなった。最後に行ったのは北京オリンピックの前年の2007年であった。北京の街中工事だらけであった。それ以前、2~3年に一度中国へ行っていたが、行く度に中国の状況は激変していた。
2001年の大同で、ヤクザ者のビンはチンピラの集団に絡まれ袋叩きになる。チャオはピストルを撃ちビンを救う。が、チャオは服役へ。
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大同のチャオ。
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5年後、チャオはビンを探す。長江沿いの奉節へ。
奉節、三峡ダムに近い町。
しかし、ビンには新しい女がいた。その女には「人の心は移ろうものよ」、と言われ、ビンには「オレは変わってしまった」、と言われる。
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切ない。
ウルムチ行きの列車に乗る。ウルムチでは仕事があるって聞いて。新疆ウイグル自治区のウルムチ、大都会である。時代は2017年となっている。
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2017年、二人は大同へ帰っている。
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大同、奉節、ウルムチ、そして大同へ。7000キロ余の流離い、移ろいである。
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チャオ、身体を痛めたビンを支える。
習近平の覇権主義が続く中、このような切ない恋物語もある。今の中国。