工作 黒金星と呼ばれた男。

75年前、日本の支配から解放された朝鮮、1950年から3年に亘る南北交戦の後も、角突きあっている。70年近く戦争は終わっていない。休戦であるにすぎないんだから。
この1、2か月間には、北の金正恩、与正兄妹が手分けして、文在寅に対し突っ張っている。笑ってしまうようなことを言ったりしたりしているが、未だ30代半ばの金兄妹が一国を抑えているのだから仕方ないといえば仕方ない。勝手にやってくれってことである。
韓国(大韓民国)と北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、この70年の間、さまざまなやりとり、情報戦を展開しているが、見応えのある戦いもある。単に突っ張り合っているようなものでなく、中身のあるインテリジェンス戦を。
1990年代の実話に基づいた本作もそのような作品。
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クーデターにより韓国を掌握した朴正熙が腹心の部下に暗殺されたのは1979年、その後も全斗煥の軍政が続き、これぞ民政と言える金大中が選挙で大統領についたのは1998年。ひと月ほど前触れた、NHKのEテレで流れたチャン・ワン監督の『タクシー運転手 約束は海を越えて』は、金大中が逮捕された1980年の光州事件であった。
北朝鮮では、金日成が1994年に死に、金正日が後を継いだ。世にも可笑しな社会主義体制下での世襲である。
その1990年代の韓国と北朝鮮との間に繰り広げられたスパイ映画がこれ。
1992年、韓国国軍情報司令部の少佐であるパク・ソギョンは、過去を捨て工作員として北朝鮮へ送りこまれる。パクのコードネームは、黒金星(ブラック・ヴィーナス)。パク・ソギョン、まず北京で3年間実業家として過ごす。北を欺く商売人として。実話に基づいたそうである。
パク・ソギョン(ブラック・ヴィーナス)に与えられた使命は、北の核開発情報の入手である。
北朝鮮はともかく資金不足、資金がほしい。北の対外経済委員会所長のリ・ミョンウンが近づいてくる。リ・ミョンウン、金正日とも会うことができる立場にいる。
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『工作 黒金星と呼ばれた男』、監督:ユン・ジョンビン。
主人公のパク・ソギョンに扮するのは、ファン・ジョンミン、北のリ所長には、イ・ソンミンが扮する。今までにも見知った役者、共に見応えがある。
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左端は、韓国国軍情報司令部少佐のパク・ソギョン(ブラック・ヴィーナス)。その右は、北朝鮮対外経済委員会所長のリ・ミョンウン。その右は、黒金星(ブラック・ヴィーナス)に北への非情な潜入指令を出す韓国国家安全企画部(KCIAである)部長のチェ・ハクソン。右端は、北の国家安全保衛部部長のチョン・ムテク。黒金星(ブラック・ヴィーナス)に疑惑の目を向け続けている。
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黒金星(ブラック・ヴィーナス)、いざとなったら自分で判断をしろと言われている。自らの判断で生死を決めろ、と。
現実の物語をなぞったスパイ映画であるが、ハラハラドキドキする。
黒金星(ブラック・ヴィーナス)が金正日と会う場面もある。黒金星(ブラック・ヴィーナス)、目を合わせるのじゃないぞ、と事前に言われる。洋の東西を問わず、王や女王と会う時に注意される言葉がここでも。
出っ張った腹でそっくりかえって出てきた金正日の前を、毛足の長い真っ白い犬が歩いていた。金王朝だな。
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緊迫した場面が続くスパイ映画である。
南と北のせめぎ合い。その一瞬一瞬に命がかかっている。
が、南、韓国の国軍情報司令部少佐・パク・ソギョン(ブラック・ヴィーナス)と北朝鮮の対外経済委員会所長のリ・ミョンウン、敵対する二人の間にある種の友情のようなものが生まれる。
70年もの間分断され、命のやりとりをしている南北も。やはり、同じ民族、同胞なんだと思わざるを得ない。
南と北の裏の裏、とても興味深い。外野席からの観戦であるが。


地震、豪雨、津波、・・・、日本は天災の多い国である。
熊本が集中豪雨に襲われた。多くの人が亡くなった。


昨日の東京都知事選、小池百合子が再選された。決まっていたようなこと。
それにしても、今、東京に限らず、日本に限らず、世界中どこに限らず、ポピュリズムに覆われているようだ。
何となし、ヤな感じがしている。