スターリンの葬送狂騒曲。

今ロシアでは、憲法改正の是非を問う国民投票が行われている。投票最終日は7月1日であるが、今日まで4日間の途中集計では、賛成が76%を占めている。
ロシアのことなどそれがどうしたであるが、それがそれがどうしたでは済まない投票である。
現在4期目の大統領であるウラジーミル・プーチンの任期は2024年までであるが、憲法改正案が通れば、今の現職大統領に限り5選以降も妨げないということだ。
今の現職大統領ってプーチンのこと。プーチンに限っていつまでもロシアのトップに君臨し続けることができるということ。
プーチン、対ナチスドイツ戦勝75周年の軍事パレードも赤の広場で強行した。プーチン、ロシアの皇帝、王さまになりたいようだ。
プーチン王朝を創りたいらしい。
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レーニンにより帝政ロシアのロマノフ朝が崩壊、ソビエト連邦となり、そのソ連が崩壊して以来、ロシアのこの100年余、その主はさまざまに代替わりしてきた。
レーニン、スターリン、マレンコフ、ブルガーニン、フルシチョフ、ブレジネフ、アンドロポフ、チェルネンコ、ゴルバチョフ、エリツィン、そしてプーチンと。
レーニンとスターリンというカリスマを除けば、あと目立つのはフルシチョフとブレジネフ、そしてゴルバチョフぐらい。ところがプーチンは、このフルシチョフ以下の3人をも凌駕しようとしている。王政復古、プーチン朝を創るつもりでいるようだ。
絶対的な存在であったレーニンやスターリンと肩を並べようとしている。現在のロシアで。
レーニンは革命の元勲であったが、その後を襲ったスターリンは暴君であった。盾つく者を次々と粛清した。殺しに殺した。
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1953年3月5日、そのスターリンが死ぬ。
『スターリンの葬送狂騒曲』、監督:アーマンド・イアヌッチ。イギリスとフランスの合作。
絶対的な存在のスターリンが死に、クレムリンは大騒動となる。オレが後を継ごうと権謀術策が渦巻く。「狂騒曲」となっているが、現実の動きに近い。
それ故であろう、ロシアではこの作品の公開は禁じられた。
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スターリンの死後、ナンバー2であったマレンコフ、秘密警察NKVD(KGBの前身、よく知られているように、後年のプーチンもKGB出身である)を握るベリヤ、そしてウクライナのおやじフルシチョフの3人がトップ3を形成した。
と、悪賢いベリヤはマレンコフと組み、凡庸なマレンコフをスターリンの後継につける。
フルシチョフも反撃する。モロトフ、ブルガーニン、さらには第二次世界大戦の英雄・ジューコフをも引きこみ、会議の席上一気にベリヤを拘束、即決裁判でベリヤを銃殺刑に処す。
クレムリンでの凄まじい暗闘である。
なお、ここに出ているスターリンの娘・スヴェトラーナは、1967年ソ連を脱出、アメリカへ亡命、アメリカへ帰化している。スヴェトラーナの亡命、世界中が驚いた。
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赤の広場に面したクレムリンの壇上に並ぶソ連のお歴々。
確かにあのころ、こういう場面がよく出てきた。
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左からフルシチョフ、マレンコフ、カガノヴィッチ、ブルガーニン、そしてベリヤであろうか。
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スターリンの死後、スターリンの遺体は防腐処理が施され赤の広場に面したレーニン廟と並び、レーニン、スターリン廟として祀られていた。
が、フルシチョフによるスターリン批判の後、スターリンの遺体は運び出された。
ソ連崩壊後、エリツィンが戦車の上に乗ってクーデターを鎮圧した翌年、私はモスクワへ行き、赤の広場に面したレーニン廟へ行った。レーニンは目を閉じて眠っていたが、スターリンの遺体は既になかった。
ロシアという国、この100年余を取ってみても不可思議な国である。
そして今、プーチンが新たな王朝を立てようとしている。