チューリップ・フィーバー。

洋の東西、時代を問わず、バブルが発生する。投機的思惑によって、本来の動きとはかけ離れた値動きが生じる。
投機と言いバブルと言い、すぐ頭に浮かぶのは不動産であるが、どのような分野でも投機的バブルは発生する。植物の場合でも、稀少種は投機の対象となる。万年青や東洋ランの一部の世界。また他の植物でも、斑入りや綴化といった突然変異で珍しい現象が現れたものなども、投機対象となる。
植物で史上最大の投機バブルと言われるのが、17世紀オランダでのチューリップ・バブル、チューリップ・フィーバーである。チューリップの球根ひとつが豪邸の値と同じ、と言うのだから30年ほど前の日本の不動産バブルどころじゃない。
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『チューリップ・フィーバー』、監督はジャスティン・チャドウィックだが、原作はデボラ・モガー。
デボラ・モガー、あのすこぶるつきに面白い『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』の作者。あれはインドの話、本作はフェルメールの作品からインスパイアされた17世紀オランダの話。
たしかにフェルメール。主人公の若い女など結婚はしているのだが、フェルメールの≪真珠の耳飾りの少女≫、またの名≪青いターバンの少女≫を思わせる。
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ラピスラズリを使ったフェルメールの青。
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修道院で育てられた少女・ソフィア(アリシア・ヴィキャンデル)は、修道院長から遥か年が離れているが豪商のコルネリスとの結婚を勧められる。修道院長に扮するのはジュディ・デンチ。さすがの迫力でこう語る。「修道院で育った女の子は、男をとるか、客をとるか、修道院をとるか」なんだと。
17世紀オランダの修道院長、凄いんだ。
フェルメールの絵から抜け出たような美しい少女、年の離れた裕福な男の後妻となる。
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左から2人目が、ソフィアが嫁いだ年の離れた豪商・コルネリス(クリストフ・ヴァルツ)、その右は、その後ソフィアが密かな恋人とする若い画家・ヤン(デイン・デハーン)、その右は、修道院長のジュディ・デンチ。両端は、豪商の家の小間使いとその恋人の魚売りの男。
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年取った豪商のコルネリスは跡継ぎの子供が欲しい。が、懸命に頑張るが子供はできない。
そのころのオランダの富裕層の常、豪商コルネリスは自分とソフィアの肖像画を描かせる。若い絵描き・ヤンに。
レンブラントの世界である。
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若い画家・ヤンとソフィア、絵に描いたような美男美女。
恋に落ちるのに時間はかからなかった。
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しかし、小間使いに知られてしまう。
小間使いは恋人である魚売りの男の子供を宿している。ここでソフィア、その小間使いとその医者をも引きこんで大芝居を打つ。ややドタバタ劇となる。
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ソフィア、美しい。
それはそうだが、チューリップ・フィーバーやチューリップ・バブルのことはどうしたってことになる。
実は、若い画家・ヤン、ソフィアと逃げる金を得るため、チューリップの投機に賭ける。チューリップの球根ひとつに。チューリップ・フィーバー、チューリップ・バブルの渦中に。
投機なんてものは、上手くいくのは100の内一つか二つ。よほど先が読めるヤツか、運のいいヤツしかいない。今のコロナ状況の中、暴落しているNYダウや東証の中でも大儲けしているヤツはいる。それが投機。
若い絵描きのチューリップの球根への投機、上手くいくはずはない。
何のかの、さまざまごたごたあるが、最後は可笑しなこととなる。
あの若いソフィアを修道院から金で買ったような男のコルネリスが、やけに物分かりのいいじじいとなる。ナンで。
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ブレイカー(色割れ)のチューリップを持つソフィア、フェルメールの女。
美しい。