大調和展の蓜島さん、昭和を思う。

ひと月ぐらい前であろうか、蓜島時雄さんから大調和展の案内ハガキが届いた。
そこに一筆書き添えられていた。おそらく今年の作品が最後の出品になる、という意が。事情あり今まで行かなかった年もあるが、今年は行かざるを得ない。山宣展と同じく、行かなくちゃである。
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10日ほど前の東京都美術館、さまざまな公募展が催されているが、大調和展は伝統を持つ団体展のひとつである。
途中中断があるので今年は第58回展となっているが、初回は昭和2年である。以前、「大調和会の歩み」という企画があった。それによると、昭和初期、白樺派に寄り添って活動していたらしい。武者小路実篤、志賀直哉、岸田劉生、さらに高村光太郎、佐藤春夫、犬養健などなんとうという人たちが関係している。
平成を飛び越し、昭和の残り香が感じられる。
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出展作の傾向も昭和色。
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蓜島さんの作品は第4室にあった。
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この作品。
ある企業のオーナー社長であった蓜島さん、20年ほど前に仕事から引退した。現役時代、時折り業界の集まりなどでお会いすることはあったが、さほど親しくはなかった。ましてや絵の話などはしたことはなかった。
その後知ったことであるが、仕事を引退した蓜島さん、住まいとは別にアトリエを作り、そこで絵を描く生活に入ったそうだ。年に2度はヨーロッパの古い町にスケッチ旅行へも出かけられ。恵まれた老後の1タイプであろう。
それはともかく、だから今までに見た作品はそのほとんどはヨーロッパの中世の風情を漂わせた町。今回展への出展作も。
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蓜島時雄≪巡礼者達の宿場町≫。
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巡礼の宿場町、サンチャーゴ・デ・コンポステーラへの巡礼道ではないかと思うが、ディスクや本屋の看板、スペイン語とも思われない。併記されたフランス語は分かるが。サンチャーゴではないのかもしれないな。
それにしても蓜島さん、今回が最後の出展になるだろうと記されていたが、はたしてどうであろうか。初めて会った時から蓜島さんはオーナー社長であった故大分年上の人という印象があり、今では90代になられているのではと考えていた。が、古い記述でそうではないことが分かった。今、80代半ばである。先日退位され上皇となられた先帝と同年代である。
これが最後の・・・、ということよく理解できる。