樹木希林恐るべし(3) 夢千代日記。

山陰の小さな温泉町の置屋の女将で自らもお座敷に出る夢千代は、神戸の大学病院へ通っている。広島での胎内被曝による原爆症を患っている。
早坂暁の手になる『夢千代日記』は、こうして始まる。NHKテレビで1981年から84年にかけて「続」と「新」も合わせて3作、3度放映され、85年には浦山桐郎監督による映画版『夢千代日記』が作られた。

キネ旬の樹木希林追悼企画第3弾である。
企画・脚本:早坂暁、監督:浦山桐郎の『夢千代日記』。
<お別れです。いのち残り火、終の恋映え。>
いやー、強い言葉である。夢千代の強い意志。

早坂暁の『夢千代日記』、さらに思いだされる『花へんろ』。桃井かおりが演じた。私はテレビドラマはほとんど見ていないが、早坂暁のこのふたつは思いだされる。
昨日、今上天皇の平成を思うメッセージが報じられた。
今、早坂暁の昭和を思う句がよぎる。
     昭和とは どんな眺めぞ 花へんろ
との。

この時、主演の吉永小百合、40歳を迎えていた。が、儚げな原爆症の芸者置屋の女将を、それは美しく演じている。また、撮っている。

吉永小百合演じる夢千代、お座敷へ出る。
     何の因果で 貝殻漕ぎなろうた
       カワイヤノー カワイヤノ
      色は黒うなる 身はやせる
        ヤサホーエヤ ホーエヤエー
       ・・・・・ ・・・・・
       ・・・・・ ・・・・・
時折り、貝殻節が出てくる。

テレビの3作、そして映画でもすべてに出ていたのは、樹木希林が扮する年増芸者・菊奴である。
実は樹木希林と吉永小百合、不思議なことに年齢もほぼ同じ。樹木希林が2つ上。「美しい人は美しく、そうでない人はそれなりに」、とお互いに認めあっていたそうだ。

前段はある。
が、それを端折り進めると・・・
北大路欣也扮する旅役者、時効寸前の殺人犯とのあれこれがある。
夢千代、何と隠岐の島行きのフェリーに乗り、その男の許へ。

こう思い・・・
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が・・・
夢千代、亡くなる。