樹木希林恐るべし(1) 万引き家族。

5月19日、是枝裕和はその監督作『万引き家族』で、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルム・ドールを受賞した。
是枝裕和、カンヌへは7回参加、コンペへは『海街diary』以来3年ぶり、5回目の挑戦であった。
今年のカンヌ審査委員長はケイト・ブランシェット。吸いこまれてしまいそう、という目を持つあの美女。「演技、監督、撮影など総合的に素晴らしい。並外れた映画だ」、と言う。

日本公開は6月8日。

キネマ旬報の直営館では、パルム・ドールを持つ是枝裕和の写真が貼られていた。

こういう是枝裕和の演出写真も貼り、9月初めからキネマ旬報の直営館でもかかっていた。

9月15日、助演の樹木希林が死ぬ。

キネマ旬報の直営館では、すぐさま『万引き家族』を含む樹木希林の近場の出演作6作の連続上映を決める。
ここには12月7日までとなっているがとんでもない、今でも『日日是好日』が延々と続いている。終映日未定として。
樹木希林については、その生きざまに関しあちらこちらから、その人生を追っている。
たしか今年のいつ頃であったか、NHKの記者が1年間密着取材したドキュメンタリーが流された。「あなた、こうやってくっついて撮ってるけど、これ何か意味があるのかねー」、なんて言われながら。
全身癌を公表したのは、いつの頃だったろうか。この『万引き家族』を撮った後、轟夕起夫のインタビューにこう答えている。「是枝作品の中に居るのはこれでおしまい」、と。「額面どおりですよ。体力的にも、役者としてもですね。もういいだろうと。そういうことです」、とも。是枝作品の常連である樹木希林が。
樹木希林、昨年から今年にかけての『モリのいる場所』、『万引き家族』、『日日是好日』以後の予定はまったく入れていなかったそうである。
いよいよその時が、死ぬ時がきたな、と自覚、悟ったのであろう。改めて、凄い人だと思う。
さらに樹木希林の凄さはそれにとどまらない。商品力が凄い。キネマ旬報の直営館での樹木希林追悼連続上映、客が入っているんだ。役者として客を呼ぶ商品力があるんだ。キネ旬の直営館には時折り行くが、酷い時には何人客がいるかなーなんてこともある。が、樹木希林の映画には客が来る。終映日未定で続映しているのも当然。
樹木希林恐るべし、である。

主演はリリー・フランキーと安藤サクラ、共に曲者だ。
この作品、カンヌの後にも是枝裕和は幾つもの映画祭で作品賞や監督賞を受けている。
また、安藤サクラも幾つもの映画祭で主演女優賞を受けている。『0.5ミリ』、『百円の恋』以来、安藤サクラには「何ていう役者だ」という感を持っている私、それも当然だなと思うのみ。

万引きっていうのは犯罪だ。よくない行為である。
が、ここに映っている6人の家族は、暮らしていく上で万引き行為も行っているんだ。お父ちゃんは日雇い、お母ちゃんはパート、お母ちゃんの妹はJKビジネス、みんな稼ぎは少ない。それにおばあちゃんの年金が6万ばかりあり、それに頼って暮らしている。だから、万引きも必要になるって構図なんだ。
今の日本である。こういう現実もあるんだってことを、是枝裕和は言っているんだ。
さらにこの写真には2人の子供が映っている。子供もワケありなんだ。虐待の問題も。
現在の日本の問題、さまざま考えさせる。

「盗んだのは、絆でした。」ってポスターにある。
6人の家族、実はみな血がつながっていない家族なんだ。
で、絆を盗んだのか。

5月のカンヌには、死の4か月前の樹木希林も含む家族6人、監督の是枝裕和と共に行き、レッドカーペットの上をを歩いていた。