三友書園展。

千葉県北西部に利根運河がある。利根川と江戸川を結ぶ運河。我が国初の西洋式運河である。
東武鉄道野田線はまあ田舎の電車という感じであったが、今ではその名も東武アーバンパークラインとカタカナ名となり、ややシャレてきている。利根運河と交差するところに「運河駅」がある。その駅のコンコースに催し物ができる展示場があり、今年も流山在住の書家・茂野柰園が主宰する「三友書園展」が催された。

茂野柰園と弟子たちとの展示会。

作品が並ぶ。

こちらはお弟子さんたちの作品の模様。

茂野柰園の挨拶。

お客も来ている。

この子たちはお弟子さんのようだ。

子供たちには宮沢賢治だな。
[
   菖蒲へも 夜露あふれて 星迎   
一茶の句。

   菊の香や ならには 古き仏達
芭蕉である。
何気なさの中の軽やかな感覚、趣き深いねー。
いや、芭蕉の句ばかりじゃなく、茂野柰園の書も。

「耕不盡」、禅語である。
「耕せども尽きず」、心の田はいくら耕しても尽きることはない、という意味だそうだ。
茂野柰園の書、重みがある。

小屏風。芭蕉の「奥の細道」の一節。
   めずらしや 山を出羽の 初茄子
羽黒山で7日間参篭した後、初茄子で迎えてくれた後援者への挨拶句。
茂野柰園、ここでは芭蕉に寄り添い軽ろみのある書を。


茂野柰園とその弟子たちの書、他にも面白いって思ったものはあったが、ここで擱く。
この後行われたパフォーマンスが面白かったので。
茂野柰園の娘さんが登場した。去年までは中学生であったのだが、高校1年生となっていた。
「虚空」という字を書くという。「虚空」、高校生らしいと言えば高校生らしい。

「虚」の文字、書き始める・

ぐいぐいと書いていく。

と、「あ、間違えた」と言って半紙を畳む。

さらに畳み横の方へ。

やり直しって言って・・・

またぐいぐい書き進める。

「虚」の字を書き終えると、立ちあがり眺める。

次いで「空」の字。

最後、サッと払う。

最後にサイン・落款を書きいれる。

昊龍と入れる。
高校1年生の女の子、自らこの名に決めたそうだ。

その後、母親であり師匠でもある茂野柰園が、「私もひとつ」と言って筆をとった。
自ら書いた一茶の句「菖蒲へも 夜露あふれて 星迎」を暫らく眺め、「私、露という字が好きなんだ」、と言って書き始めた。

弟子である娘さんに比べると、さすがゆとりある筆運び。

柰園と落款を入れる。

その後は娘であり弟子である茂野昊龍のパフォーマンスが続く。
何を書くか来客のリクエストを。最初は「希望」の「希」という字であった。

次いでは「帆」という字。
横で見つめる茂野柰園に、「娘さんも貴女と同じように筑波大の芸術学群の書専攻を目指しているのでしょうか」、と訊いた。「どうなるんでしょうね」、という答えが返ってきた。
が、その横顔にはそうなってくれればいい、という風情が漂っていた。母親の。

これは「恵」という字。

左下の「露」は茂野柰園の手になるもの。それ以外は弟子であり娘である茂野昊龍の手になるもの。
弟子である娘は、まだまだ修行を積まねばならないであろう。が、面白い。