「住み果つる慣らひ」考(23)。

この1年半ばかり何度か身体の具合が悪くなり、そろそろそのことを考えた方がいいなと思うようになった。
昨秋と今春、二度の入院で感じた病人たちの様ということもあり、孫娘や孫坊主たちの姿に「これは引き継ぎ時だな」と思ったこともある。
で、”「住み果つる慣らひ」考”を記し始めた。『徒然草』の一節を借用し。
5、6回か7、8回程度と思っていたが、10回を超え20回も超えてしまった。
今日で終わることにする。老いや死のことを考えてきたが、最後は元気印のジジババで締めることとする。
2か月前の「藝術新潮」3月号の特集は「超老力」であった。元気印のジジババアーティスト、元気、元気。
巻頭の目玉は、SMAP解散後の香取慎吾(絵の仕事も次々に舞いこんできているそうだ)が横尾忠則を訪ねている。香取慎吾41歳、横尾忠則81歳。ふたりの対談。

横尾、香取に、「どんどん老朽化していきますよ。でも、それがいいんです」、なんてことを話している。

減じる、いかに減じるか。そのために老化が必要だって言っている、横尾は。
三島由紀夫にも愛されたかっての美少年・横尾忠則、老化を受容している。

香取慎吾、この日、自作を3点横尾忠則のアトリエに持ちこんでいる。
「その日暮らし」、「アーティストになる以上は義理や人情に・・・」、と横尾。
横尾忠則の言葉、湿っていない、乾いてる。


「藝術新潮」3月号、ついでは5人のアーティストへのインタビュー。

まずは御年104歳の篠田桃紅。
「あたくしはもう、半分死んでいるようなものですから、話半分に聞いてくださいよ」と語り、「絶対的な価値観なんてない」と語る。
さらに、今でも発表を続けていることについて、上のような言葉を。

野見山暁治、97歳。
文化勲章受章者の野見山暁治、歳だなんてさほど考えていないんだ。

柚木沙弥、95歳。
上の文言の前に、<「濱田庄司先生が、・・・・・、・・・・・。そうやって最近、いろんな先生の言っていたことが結局ひとつのことだって、だんだん・・・・・>、と。
それが「歯磨きのチュ−ブでも・・・」に繋がっていく。

安野光雅、91歳。
怖いものなんてなし。悟ってんだ。

中谷芙二子、84歳。
この中では最年少である。
霧を発生させている。あちこちで。初めっからの反藝術って言い切ることが若い。


これら5人の方々、世間の規範から言えばジジババなのであるが、死ぬことなどはまったく考えていないようだ。80歳になり、90歳になり、100歳になっても。
”「住み果つる慣らひ」考”、死生云々の考察者ではなく、元気印のジジババで幕を下ろす。