病牀五輪(6) 小平奈緒とイ・サンファ。

羽生結弦の金メダルの後、これも金メダルというお約束事があった。小平奈緒のスケート500メートルである。
強力なライバルはいる。五輪3連覇を狙っている韓国のイ・サンファ(李相花)である。500メートルではこのところのワールドカップでも連戦連勝、負けなしを続ける小平奈緒ではあるが、油断は禁物。
小平ファンの私としては何が何でも勝ってもらいたい。勝たせてやりたいという思いは強かった。

2月18日朝7時のNHK。

黒岩敏幸、こう語る。

小平奈緒、カッコいい。
じじいがこんなことを言うのもナンであるが、惚れ惚れするな。

黒岩敏幸、こうも語る。
イ・サンファもこの日に照準を合わせているんだ。

勝負は夜9時前。

9時前のライブ映像。
ウォームアップルームでの小平奈緒。

スピードスケート女子500メートルが始まる。

小平奈緒は14組。
イ・サンファは15組。日本の郷亜里砂と滑る。

小平奈緒、インスタートである。
インスタートでの小平奈緒、このところ負け知らずである。

小平奈緒の滑り、いい。

クロッシングゾーン。小平、いいぞ。

美しい。

美しい。

力強い。

小平奈緒、36.95秒。
オリンピックレコードでトップに躍り出る。

ついで15組。
イ・サンファはアウトスタート。同走は日本の郷亜里砂。

イ・サンファ、スタート。

イ・サンファ、100メートルすぎまでは小平奈緒をも凌ぎ最速であった。

が、ゴールのタイムは37.33秒。
小平奈緒にコンマ39秒及ばなかった。

イ・サンファ、肩を落とす。
イ・サンファの五輪3連覇はならなかった。1位、小平奈緒、2位、イ・サンファとなる。

日の丸を纏った小平奈緒、涙顔ながら太極旗を手にしたイ・サンファに近づく。

小平奈緒、イ・サンファの肩に手をかけ・・・

抱きしめる。
小平奈緒、過去2度のオリンピックに君臨した絶対女王、イ・サンファの無念の思いを、その胸に優しく抱きしめた。

翌日、朝7時のNHK。

こう訊かれた小平奈緒・・・

「あなたのことをリスペクトしている」と語ったと言う。
涙が出るよ。


今日は、3月11日である。
あの日から7年となる。
あちこちで追悼の祈りがささげられている。

今日、正午のNHK。

あちこちで、

人々は祈っている。

この数値、忘れることはできない。

今日、あちこちで・・・

祈る。

祈る。

あの日のあの時間が近づいてくる。
NHKの画面、国立劇場での東日本大震災7周年追悼式の模様に。

その時、午後2時46分、黙禱。

安倍晋三の式辞。

秋篠宮のお言葉。
おそらく宮中では、天皇皇后両陛下がこのNHKの画面をご覧になっていたことであろう。
天皇皇后、最後の東日本大震災被災地への慰問の旅として、東京電力福島第一原発の近くを通る道を通ることを計画されているそうだ。
現在の天皇皇后のご意志はよく解かる。それが次の代に引き継がれるか、これは不明であると言わざるを得ない。