2017年8月6日。

今日、8月6日。
広島被爆72年目の原爆の日。

広島平和記念公園で行われている平和記念式典を中継しているNHKの画面、一瞬こういう映像が流れた。
鋭い目つきの女性がいる。中満泉である。

中満泉、国連事務次長であり軍縮担当上級代表である。国連の事務総長から数え、ナンバー3のポスト。世界市民に対し、ベラボウな責任を負っている。
ここで中満泉が「条約」と言っているのは、先般採択された「核兵器禁止条約」のことを指している。安保理常任理事国と共に、日本なども加わっていないもの。核の傘。理屈はさまざまある。

「核兵器禁止条約」、今日もこの後、広島市長の松井一実が平和宣言の中で日本政府に対し迫っていたが、安倍晋三、目をつむっていた。
なお、中満泉、この後、「被爆者のメッセージは大きなものがあった」、と語っている。被爆者の声は強い影響力を持つ。被爆者の声、「核兵器禁止条約」を纏め上げる中満泉の剛腕を後押ししたのであろう。

NHKの今年の広島での平和記念式典中継、これが出てくるんだろうなと思っていた。
予想に違わず出てきた。

『この世界の片隅に』、素晴らしい映画であった。
キネマ旬報が選ぶ2016年日本映画第1位。大上段に振りかぶることなく、広島のこと、原爆のことを描いていく。

原作:こうの史代、監督・脚本:片渕須直。
<昭和20年 広島・呉 わたしは ここで 生きている>。
マンガにしろ映画にしろ、視覚表現が言葉より強いことがある。
ごく普通の人のごく普通の日常の営みが、ある時何やら分からない爆弾でって、大袈裟な言葉を使わないだけにズンとくる。

8時15分、鐘が撞かれ・・・

黙祷。
広島の町、静まる。

広島市長・松井一実の平和宣言が始まる。
「72年前の今日、8月6日8時15分・・・・・」、と。

広島への新型爆弾を報じる昭和20年8月8日付け朝日新聞。
『NHK人間講座 野坂昭如「終戦日記」を読む』(2002年刊)から複写した。
<相当の被害を生じたり>、<新型爆弾を使用せるものの如きも詳細目下調査中なり>、との文言がある。

松井一実の挨拶・平和宣言は続いていく。

このように。

安倍晋三、何と聞く。

NHKの中継も終わった後、9時前、広島市による記念式典の中継ライブ映像。
国連事務次長兼軍縮担当上級代表・中満泉が、国連事務総長・アントニオ・グテレスの挨拶を代読している。初めに英語で、「日本語で」と断って。
中満泉、国連との最初の接点はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)。緒方貞子に鍛えられた、という。
ボスニア、コンゴ、シリア、イラク、アフガン、・・・、・・・、フィールドワークを多くこなしている。それもヤバい紛争地ばかり。
ご本人も言っているが、度胸がいいんだ。すこぶるいい。

国連事務総長の挨拶の代読を終え退く中満泉。
白っぽい着物に漆黒の帯。中満泉、風を切って歩いていく。
こう言っちゃなんだが、かなりな組織のやくざの女親分を思わせる。
国連事務次長、日本人でありながら日本人ではなく世界人であるが、そうは言っても日本、凄い人材を持ちあわせている。いつか日本へ帰ってきてもらうのもいいんじゃないか。
72回目となる広島平和記念式典、例年と異なり、『この世界の片隅に』と国連事務次長兼軍縮担当上級代表・中満泉が印象に残った式典、8月6日であった。