私の「あと千回の晩飯」。

<いろいろな徴候から、晩飯を食うのもあと千回くらいなものだろうと思う。>、と山田風太郎が朝日新聞朝刊に記したのは平成6年10月6日であった。
続けて、<といって、別にいまこれといった致命的な病気の宣告を受けたわけではない。七十二歳になる私が、漠然とそう感じているだけである。病徴というより老徴というべきか。>、と記される。(山田風太郎著『あと千回の晩飯』 朝日新聞社、1997年刊)
世の中には、70になっても80になっても老徴を感じないどころか、感じること自体を良しとしない人種もいるが、人さまざまである。本人、その人自身にしか分からない徴候というものもある。72歳の山田風太郎が感じたような徴候が。
ひと月ほど前、何かヘンだな、何か具合が悪いな、という状態になった。何か身体の具合がヘンだな、という状態、今でも同じような状況である。
以前から申しこんでいた人間ドッグや頭のMRI検査も受けた。結果は今月末くらいになるようだが。結果はどうあれ、ひと月ほど前から何かヘンな状態になったことは事実。そういう時期なんだろうと思っている。
平成6年の山田風太郎、70を超え72歳となり、晩飯を食うのもあと千回くらいなものだろう、と感じている。あと千回、約3年である。しかし、山田風太郎は死ぬまでに、千回どころか2500回ほどの晩飯を食って79歳で死んだ。4年ぐらいオマケがついた。
あと数日で私は76歳となる。山田風太郎との20数年の時間差があるので、風太郎先生72歳での「あと千回の晩飯」と私の76歳での「あと千回の晩飯」、ほぼ同条件ではないか、と考える。何かは分からないが、いろいろな徴候はあるので。
で、山田風太郎の『あと千回の晩飯』のタイトルを借用、私のそれに置き換えた。
あと千回、3年ならば79歳で、ということになる。それでも十分である。が、風太郎先生同様4年のオマケがつくと83歳となってしまう。このところの1年が経つのは速いが、それでも80歳を過ぎることには驚く。
山田風太郎の『あと千回の晩飯』には、風太郎先生ご自身の晩飯ばかりでなく、正岡子規、夏目漱石、森鴎外、勝海舟、谷崎潤一郎、小津安二郎などの人たちの食事が出てくる。
大食死と山田風太郎がいう子規や、いかにもという大谷崎の食い物を除いては、皆さん質素。漱石の食事など、風太郎先生にかかると、<貧寒きわまるものだ>、と切って捨てられる。
風太郎先生は、1日に2回飯を食う。昼と夜。夜は夕刻からウイスキーのオンザロックをボトル1/3飲みながらご馳走を食う。ある時から朝酒をする。朝は日本酒大ぶりのグラスに一杯。それからまた寝る。
まあ、それでも79歳まで生きたんだから、それはいい、山田風太郎は。風太郎先生、こういうことも言っている。
<七十歳を越えて、・・・、要するに「無責任」の年齢にはいった、ということらしい>。その言動に責任を持つことは物理的に不可能な年代だ、というんだ山田風太郎は。
「したくないことはしない」、という言葉が何度も出てくる。私もこの言葉をこれからの指標にしていこうと思っている。



この1か月、さまざまなことがあった、
2月13日、金正男がクアラルンプールの空港で暗殺された。VXガスで。
手のこんでいるようなこんでいないような、摩訶不思議な暗殺劇、その元凶はピョンヤンにいる金正恩だと割れているのいるのだが、これがひと月経っても進展をしていない。何たること。
外で酒を飲む時にはごく少量、一合程度としている。が、家でははるかに多く飲む。ホットカーペットの上でうつらうつらする。時に夢を見る。
アメリカは特定の人物を排除するシステムや技術を持っている。ビン・ラディンをピンポイントで排除した時のような。刈りあげた頭の太った若い男がドローン攻撃を受けている夢。
現実となるか。



金正男が殺された日、鈴木清順が死んだ。93歳。
『殺しの烙印』、そして『ツゴイネルワイゼン』、『陽炎座』、『夢二』の大正浪漫三部作。
日活を干された時期の清順さんの前の奥さんの献身ぶりを知るだけに、身に沁みる。



暫らく後、かまやつひろしが死んだ。ムッシュかまやつと報じられた。
<下駄をならして奴がくる ・・・>、40年少し前、カラオケ初期の時代の定番であった。



3月10日、朴槿恵が罷免された。
朴正煕の娘・朴槿恵には思いいれがある。何年か前の大統領選の時には、ソウルへ行こうかなと思っていたほどであった。結局、行かなかったが。
今となっては朴槿恵、裸の王女さまであったのであろう。これから厳しい責めを受ける。



3月11日、東日本大震災から6年。

天皇皇后両陛下に代わり秋篠宮ご夫妻が出席された。



春場所初日。

理事長・八角の協会ご挨拶。

稀勢の里の土俵入り。
いや、なかなかのものであった。

初日の星取。
今場所は関脇が面白い。
琴奨菊の大関復帰の確率、6〜7割はあるとみる。高安と玉鷲は、共にやるんじゃないか。大関を窺う状況になる、と予想する。



ひと月前、消えてしまったブログの復元、「はてな」に依頼していたが、数日後「はてな」から来たメールでは復元はできないというものであった。
シャクであるが、仕方ない。
スコセッシの『沈黙』が消えてしまった。
せめて1枚だけ写真を載せよう。

イッセー・尾形の演技など凄まじいものであったが、欧米世界には届かなかったようだ。マーティン・スコセッシの作品とはいっても。