稀勢の涙。

先場所千秋楽、昨年11月27日のこの雑ブログのタイトルは、「稀勢のため息」とした。
3人の横綱を倒しながら、その後栃ノ心に敗れた後に思わず漏らした「ああーあぁー」という稀勢の里のため息に、稀勢の里がとても愛おしくなった。ここ一番で踏ん張れない稀勢の里、と暫らく突き放していたが、そのため息に心が動かされた。いとおしい、と。
その稀勢の里に何とか優勝させてやりたい、賜杯を抱かせてやりたい、綱を張らせてやりたい、と。
それがわずか一場所、今場所で実現するとは、正直言って思ってもいなかった。今場所の優勝は、おそらく3場所優勝から遠ざかっている白鵬であろう、と考えていた。
が、稀勢の里が優勝した。
時代は動いた。

昨日稀勢の里の優勝が決まっているとはいえ、今日のこの一番は大事である。
横審の委員長は、明日白鵬に負けても横綱昇進だ、なんて甘いことを言っており、それが規定路線となっているようだが、今日この一番に負ければ横綱昇進は見送るべきだ、と私は考えていた。

土俵下、ひかえの稀勢の里。

同じく白鵬。
両者、裂帛の気配を含んだ静寂。

今までの対戦成績。
大まかにいって3対1。しかし、昨年は稀勢の里の3対2。稀勢の里、白鵬へ近づいている。

白鵬、右から張り、稀勢の里を一気に攻める。土俵際まで。
このところの白鵬の相撲、どこか荒れてるなという思いを持っている。しかし、今日の白鵬、ここ一番の相撲を取った。稀勢の里を追いつめる。力が入った。

が、稀勢の里、懸命にこらえて、すくい投げ一閃、白鵬は土俵に落ちる。

その直後の稀勢の里のご両親。
ところで、昨日、稀勢の里の優勝が決まった後、お父さんが手記を発表している。
稀勢の里のお父さんがまず言っているのは、先代鳴戸親方への感謝。さらに、相撲を通じて礼儀、作法、道徳などの日本の良さを見直し・・・、とのこと。
稀勢の里のお父さん、ドナルド・トランプと同じ歳。トランプとの人間力の差は歴然だ。
そのトランプは今日、メディアに噛みついている。度し難い男・トランプに稀勢の里のお父さんの爪の垢でも送ってやれ、日本政府は。

稀勢の里、73場所目か。
師匠のおしん横綱・隆の里でも50場所だったのに。

稀勢の里、ついに賜杯を抱く。
<昭和天皇は国技館の貴賓席によく似合っていた、と亡くなられてみて、多くの人はあらためて気がついたようである>。
これは、半藤一利著『大相撲こてんごてん』(ベースボール・マガジン社 1991年刊)の「賜盃」の冒頭。それから四半世紀が経った。昭和天皇から今上天皇・平成天皇となり、2年後ぐらいには改元されさらに新しい天皇の御世となる。
平成の後の御世の天皇は、ハイキングや山歩きがお好きであると承知しているが、相撲はいかがであろうか。
ついでながら、半藤一利の『大相撲こてんごてん』、かなに漢字のルビをふると、「古典語典となろう」。
昭和史の専門家・半藤一利、歴史好きの「しょっきり」のつもりで書いた、と言っている。
昨日から、千秋楽の結果はどうあれ稀勢の里は横綱へ、と言っている横審委員長の守屋秀繁。

8日目、中日であった。パックンがゲストであったので、相撲と外国人といったものに。
で、こういう表記に。
]
稀勢の里、隠岐の海に寄りたてられる。

かろうじて踏みとどまり、突き落とす。

稀勢の里、中日で勝ち越し。

11日目を終わった状態。
稀勢の里、頭一つ抜き出ている。

昨日14日目、結びで白鵬が敗れ稀勢の里の優勝が決まった直後。
稀勢の里、テレビに背を向けている。その背中に、稀勢の里の優勝のテロップが流れる。

上位力士の今場所データ。
日馬富士、鶴竜、豪栄道は休場で名はない。カド番で負け越した琴奨菊は、来場所関脇に落ちる。照の富士も来場所カド番。
栃煌山、妙義龍といったかっての大関候補、実力者もひどい成績である。

今場所、二けた勝利を挙げた平成生まれの力士。
これに、今場所7勝8敗とひとつ負け越した正代と遠藤を付け加えよう。
稀勢の里が横綱となり、四横綱時代となるが、それはそう長くは続かないであろう。
あと2、3年を待たず、一気に平成生まれの力士による世代交代がくる、という予感が強くする。

そこへ繋ぐのが稀勢の里。
その稀勢の里の初優勝、その時流れた涙。
稀勢の涙、頬を伝わる。