ニューヨークの秋 追想のロバート・ストーンと島谷晃展。

島谷晃が死んで6年半近くとなる。島谷晃、あちこちに行っていたが、ニューヨークにいる時にロバート・ストーンと知り合っているそうだ。

神田の木ノ葉画廊で、今、「Autumn in New York ニューヨークの秋」展が催されている。

その案内ハガキの裏に、木ノ葉画廊主の葉満田貴久子さん、こう記している。
島谷晃の1、2年前後の古い仲間6人で、急遽オープニングに参加した。みな、葉満田貴久子さんの後輩。

オープニングレセプション。
左から2人目、長いストールの女性は、ロバート・ストーン夫人のカズコさん。彼女と話すうしろ手の女性は、木ノ葉画廊主の葉満田貴久子さん。

ロバート・ストーンの作品が並ぶ。

ロバート・ストーン≪砂時計≫。油彩。
ハイパーリアリズム。

ロバート・ストーンの作品が続く。

ロバート・ストーン≪紅い林檎≫。油彩。
抽象表現主義だ、ポップアートだ、とコンテンポラリーアートの本場であるアメリカ、実は具象画の本場でもある。アメリカという国、リアリズムが好きなんだ。アメリカンリアリズム。

読みにくいな。ボーとした写真で申しわけない。1990年の木ノ葉画廊でのロバート・ストーン展の折り、工藤国雄がこう記しているものなのだが。
要は、「ボブ、どうしてリンゴを描かないの?」、と工藤。「リンゴはセザンヌで終わっているから」、とボブ・ストーン。また、「どうしてモダンペインティングをやめたの?」、と工藤。「近代絵画はピカソで終わったから」、とボブ・ストーン。工藤国雄、共に名言だという。
が、ボブ・ストーン、この後リンゴを描くようになったようである。

ロバート・ストーン≪ひょうたん≫。油彩。
静謐。

ボブ・ストーンの作品、続く。

ロバート・ストーン≪空≫。油彩。

左の方、テーブルを挟んで葉満田貴久子さんとロバート・ストーン夫人のカズコさん。
その奥に見えているスペースが面白い。

ロバート・ストーン、木ノ葉画廊で何度も展覧会を行っている。絵本作家であるカズコ夫人との2人展も含め。その折々の案内状。

ロバート・ストーンが使っていた絵筆。写実画を描くための細筆。ずいぶんすり減っている。
「ご希望の方には1本ずつ差しあげます」、と記されている。
右の方に広げられた図録が見える。

ラスベガス美術館での展覧会図録の模様。

「銀の水差しの反射」。
よく見ると、いずれも水差しには作家の姿が映りこんでいる。

実作品もあった。
ロバート・ストーン≪ダブルポートレイト≫。油彩画であろう。
水差しにアトリエの画家が映りこんでいる。上下に。だから、ダブル。
シュールなハイパーリアリズム。

ロバート・ストーン、晩年はガンと闘っていたそうだ。抗癌剤の影響で頭髪などが変化する。その自画像を毎年描いている。精緻な筆で。

ロバート・ストーンの自画像。パステル。
おそらく最晩年に描かれたもの、と思われる。
ロバート・ストーンの絵画、どこかアメリカンリアリズムの極北であるアンドリュー・ワイエスを思い起こさせる。
リアリズムを追求し、追求し、追求したところに現れる精神性、という点に。

どの新聞だったか聞き漏らしたが、ロバート・ストーンを追悼する記事があった。
筆者は、LVAM(ラスベガス美術館)のキュレーターであるJames Mannなる人。1999年6月11日にロバート・ストーンがニューヨークで死んだ、と。
実は、この1999年の3月17日から5月2日にかけてLVAM(ラスベガス美術館)ではロバート・ストーン展を催していたそうだ。
なお、掲載されている写真は、3月17日のオープニングレセプションの時のロバート・ストーンとカズコ夫人。死の3か月前のロバート・ストーンである。

こちらは島谷がらみのコーナー。
左にあるのは島谷の木の葉模様のTシャツ。右の方には、「早慶展」の案内ハガキ。葉満田さん、早慶戦ならぬ、絵の早慶戦をやったのだそうだ。早稲田は、利根山光人、難波田龍起、それに島谷晃。慶應は、飯田善國他。

利根山さんが写っている。懐かしい。

1995年の島谷晃展の案内ハガキ。グリーン・ニューヨーカーのリトグラフが使われている。
島谷のグリーン・ニューヨーカーのリト、私の家の居間にも掛かっている。
ある時突然、島谷から筒状のものが届いた。開けてみると、リトが入っていた。グリーン・ニューヨーカーであった。ノンブルは、149/150。作品には、鉛筆で「ありがとうございます」と書いてあるが、なぜ島谷が突然送ってきたのかは解らない。礼を言って、額装して掛けた。

木ノ葉画廊、木屋であり、その前面には幾らかの木、緑がある。それを撮ろうかと表に出た。
KIYA 1884と見える。KIYA、木屋であり日本橋の刃物、包丁の老舗である。

表の薄暗い中に高橋の姿が見えた。木の間の椅子に座っていた。少しお疲れの模様である。
実は、高橋と久木の二人、この日は2時すぎから上野で飲んでいる。コップ酒を4杯は飲んだそうだ。その後の木ノ葉画廊でのオープニングである。暫しのお休み、といったところ。

高橋も戻った。後ろに島谷晃の作品が4点。

島谷晃≪My Vest≫。リトグラフ。

島谷晃≪木ノ葉シャツ≫。水彩。

島谷晃≪My polo shirt≫。銅版。

木ノ葉Tシャツ。
「もうこれで終わりです」、と葉満田さんは言う。20年ほど前、私も買った。ずいぶん長くかかったが完売したんだ。

7時ごろであったであろうか、その時にいた人で写真を撮ることになった。
前列中央で花束を持っているのは、ロバート・ストーン夫人のカズコさん。その左でひとつの椅子に二人でかけているように見えるお二人は、木ノ葉画廊主のご夫妻。ご主人は早稲田を2回も卒業している。
それも含め、ここに写っている人、8割方は早稲田の同窓。

「ニューヨークの秋」展、今週末、29日まで。神田駅近くの木ノ葉画廊で開かれている。
ご興味のおありの方は、ぜひどうぞ。



私たちは、この後、居酒屋に詳しい久木のナビで、神田駅の方へ。三州屋へ行くと、満杯であった。神田、サラリーンの街、新橋同様である。ならば樽平へ、と久木のナビ。ここで少し飲み解散。さすが2時すぎから飲んでいた久木と高橋は、あまり飲めなかった。


この1、2日、よく知られた人が死んだ。
一昨日であったか、田部井敦子が死んだ。山登りなどには関係のない人にも、この人の存在は伝わっていた。
昨日は、平幹二朗が死んだ。ハイレッドセンターの中西夏之も。
いずれの人も80歳前後。
なるほど、そういうものだ。私も近い。


何日か前、版画展のことを記した。
小澤潔の作品をメーンに。
その小澤から、その折り私が触れた作品についてメールが来た。
丸山浩司≪Field of the woods 16−1≫。木版。
私は、<遠くから見たら墨絵のように見えた。近寄ってみると鉛筆画のように見える。が、木版だ。美しい。>、と記した。
小澤潔、こう書いてきた。
<中で取り上げられていました丸山浩司氏の作品、
いいですよね。最近はモノトーン作品が多いですが、
木版に鉛筆で加筆されてたと思います。
日本の保守的な版画世界もデジタル表現の出現によって変貌期にありますが、
まだまだ従来の職人技重視の作家さんも多く、鉛筆加筆などとんでもない、と
言う人が多いです。
自分などはいいかげんで、版を活かした表現であればジャンルにとらわれず、
何でもあれ、でいいと思っていますが。>、と。
そうだよ。