今上天皇と野坂昭如。

8月15日である。

正午前、11時50分のNHK。

日本武道館からのこの中継映像を見ないことには、日本国民の8月15日はない。

今上天皇、生前退位のご意向を強くにじませた先日の「お気持ち」表明後、公式の場へは初のお出まし。
美智子皇后ともどもお年は召されたが、お元気であられるようにお見受けする。

昨年のこの日、今上天皇は安倍晋三への特別講義を行なった、と記した。
しかし、安倍晋三は今上天皇の講義など意に介していない。どこ吹く風、我が道をゆく。「戦争の惨禍を繰り返さない」、とは述べたが、先の大戦、特にアジア各国への反省の言葉は語らなかった。

今年の戦没者追悼式への参加者の最高齢は、大正4年生まれのこの人。101歳。
巡洋艦の航海長であった夫は、フィリピンのレイテ湾で戦死したそうだ。

両陛下、「全国戦没者之霊」と書かれた白木の柱に首を垂れる。
毎年この日、8月15日の同時刻、テレビの前に座り同じ光景を見ている。今上天皇と美智子皇后のこのお姿、いつまで見ることができるのであろうか。

正午、黙祷。
私も。

今上天皇、お言葉を述べられる。
昨年と同じく、安倍晋三が言及しなかった「過去を顧み、深い反省と共に・・・」、という言葉をも述べられた。
今上天皇の心中、日本が引き起こした戦争、反省と贖罪のお気持ち、さまざまな思いがおありになる。
なお、ご自身では決して参拝されない靖国神社へは、今日、例年同様「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の議員たちが集団で参拝した。安倍晋三は参拝せず、私費で玉ぐし料を奉納した。

世界の各国、先進国においても女性トップが次々に誕生している。
ドイツのメルケル、イギリスのテリーザ・メイ、場合によってはアメリカでヒラリー・クリントン、さらにひょっとしたらフランスでマリオン・ルペンが誕生するやもしれない。
日本でも女性宰相の誕生は近いな、と考えている。
小池百合子はそれを目指した。が、叶わず東京のトップに切り替えた。野田聖子も意欲を見せた。しかし、自民党総裁戦のスタートラインに立つことはできなかった。
今、女性宰相への道で最も近い立ち位置にいるのは、稲田朋美であろう。先般、防衛相となった。自民党の中でも右派。安倍晋三にその思考、近い。
例年靖国神社に参拝している稲田朋美、今年は行かなかった。稲田朋美が会長である「伝統と創造の会」の国会議員はそろって靖国神社に参拝していたが、そこに稲田朋美の姿はなかった。
稲田朋美、防衛相としてジブチへ派遣されている自衛隊の視察へ行っているんだ。
8月15日という日の外遊、閣僚として恣意的なものかどうかは分からない。が、稲田朋美、第一関門は突破した。

NHKニュース、続く。
韓国では、8月15日は日本の植民地支配から解放された日である。
4年前の8月10日には、時の大統領・李明博(イ・ミョンバク)が竹島へ上陸した。今日は韓国の国会議員10人が竹島へ上陸した。
そのような中、大統領・朴槿恵(パク・クネ)、今日の挨拶の中で日本との未来志向に触れる。
朴槿恵(パク・クネ)、北との関係、中国との関係、日米との関係、厳しい場に立たされている。


例年、私の8月15日は、昭和天皇と野坂昭如のことを考えている。
『昭和天皇独白録』と、野坂昭如が脳梗塞で倒れる前年、2002年のNHK人間講座のテキスト『「終戦日記」を読む』を携えて。
昭和20年8月15日、後に『昭和天皇独白録』を記す寺崎英成、その日記にこう記している(『御用掛日記』)。
<・・・・・。
正午 陛下放送せらると! 台水、着物を着て時の輳るを俟つ 
まり子 松脂へ
降伏!! 耐へ難きを忍び・・・・・ 爆弾 君が代奏楽 涙
・・・・・。>、と。


ところでNHKに「NEXT」という番組がある。ドキュメンタリーであるが、夜中に放映されている。だから、夜中に起きているという高齢者以外はあまり見ていない番組である。
今年の初め、そのNHK NEXTで「大人になりたかった少年 〜野坂昭如の”戦争”〜」という番組が流された。野坂昭如と50年近くの付き合いのあったイラストレーターの黒田征太郎・クロセイが野坂昭如とのあれこれを語る。

クロセイ・黒田征太郎、こう語り・・・

番組終盤でこう語る。




と。
畏れ多きこととは承知している。
が、私には、今上天皇のお姿に野坂昭如の思いが投影されているように思えてならない。

番組には、野坂の戦争童話集沖縄編の『石のラジオ』も出てきた。
『石のラジオ』、野坂昭如の文に黒田征太郎が絵をつけている。
吉永小百合が記すように、野坂昭如、沖縄の少年に自身を投影させている。
『石のラジオ』、その冒頭こう書き出される。
<昭和二十年八月十五日。正午過ぎ。
 大日本帝国南のはずれの島の、太平洋に面した洞穴の中で少年が死にました。>、。と。

『石のラジオ』、終わり近くはこうである。

野坂の文を拡大する。
8月15日である。