杉花粉から創世記まで山宣節。

熊本ばかりじゃなく、九州ではつぎつぎと地震が発生している。テレビからは休みなくと言ってもいいくらい「緊急地震速報です」、という声が流れている。
自衛隊や警察、消防その他、多くの人が行っているが、被災地への物資がいきわたってない、という。交通インフラが手酷くやられたからのようだ。高速道路はあちこちで不通、橋が落ちたり、道路が土砂で埋まったり、新幹線も脱線した。
スポーツ選手は、野球もゴルフもサッカーも、プロ選手たちの皆さん、いいプレイをして被災地に力を届けたい、と言っている。九州絡みの選手たち、常よりも力が出るであろう。
そのような能力がなく、九州から離れた地に住む私たちはどうするか。さしあたり、休み明けの明日、郵便局へ行き、振替を送ろうと思っている。
で、九州は気にしつつも、暫らく前にあった山本宣史・山宣の展覧会を。

日本表現派の東京支部展、いつものように大崎のO美術館で。

私が行った時には、係の人たち以外、人はいなかった。そういう時間帯だったのであろう。いると思った山宣もいない。

山宣得意の山の絵。タイトルは、≪白馬連峰≫。80号ほどであろうか。
山宣の膠彩画にしては、ずいぶんあっさりしている。いつも描きこんでいる山宣にしては。白っぽいところが多い。
今、東博で「黒田清輝展」が催されている。その終盤、黒田清輝のアトリエが再現されている。絵具箱と椅子とイーゼル、といったこじんまりとした再現であるが。そのイーゼルの上におそらく未完であろう、と思われる黒田の作品が乗っている。黒田清輝が死ぬ前年、1923年の≪林≫、という作品である。
そこに描かれた樹の姿と、山宣の≪白馬連峰≫の樹の姿、とてもよく似ているんだ。日本近代絵画の巨匠・黒田清輝の絵を観て山宣の絵を思い出すなんて、一体全体どういうことなんだ。
山宣、まだ黒田清輝展へ行っていないなら、是非行って確かめてくれ。
それはともかく、東博での「黒田清輝展」素晴らしいものである。黒田清輝の代表作はもちろん、黒田の師、ラファエル・コランの作品、黒田が模写したミレーなどの作品、黒田と同時代の作家たちの作品その他、今後、ある作家の作品展を企画する場合、その規範となる展覧会ではないか、と思われる展覧会である。
「黒田清輝展」については、いずれ後ほど日を改めて触れるつもりである。
今は、山宣の作品を。

タイトルは、≪舞う≫。
これ杉花粉だよね。杉花粉が舞っているんだよね。山宣、花粉症なんだよねって作品。山宣らしい。

タイトルは、≪天地創造≫。

近寄る。
上の方には太陽がある。下の方には鳥や魚や動物がいる。人間もいる。聖書の創世記の世界である。山宣による創世記。
≪白馬連峰≫は黒田清輝を思わせるが、≪舞う≫や≪天地創造≫は山宣節。