皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇。

アメリカ人はそれほどに単細胞なのか、それほどまでに生活が追いこまれている人が多いのか。大統領選の共和党予備選の動きを見ていると、ますますそう思われてならない。
めちゃくちゃなことを言っているドナルド・トランプ、その勢いが止まらない。共和党の大統領候補になることが現実味を帯びてきている。共和党主流派のエスタブリッシュメントがどうこう言おうと。
民主党の候補は、どうのこうの言ってもヒラリー・クリントンとなるだろう。しかし、ヒラリー、かっての輝きはない。国民に飽きられてきているように思える。
で、仮にトランプ vs ヒラリーとなった場合、ひょっとしたらトランプが勝つ。ドナルド・トランプ大統領の誕生となる。
こんなバカなこと起こっていいのかと思うが、ある程度の確率でそれはあり得る。
トランプ、中国ばかりじゃなく日本に対しても厳しい姿勢である。イスラム教徒の入国を禁止するとも言っている。極めつけは、アメリカとメキシコ国境に万里の長城を築く、ということ。メキシコからの不法移民をそれで食い止める、と。
プアーホワイトが直面している就労の場を守ってくれ、という声に対したものである。それと共に、メキシコ人は麻薬と犯罪をアメリカに持ちこんでいるから、とも語っている。メキシコ人は強姦犯とも。
ドナルド・トランプ、むちゃくちゃなことを言う。それが多くのプアーホワイトの共感を呼ぶ。とんでもないことなんだが。
しかし、ドナルド・トランプの言っていることで、ひとつだけ当たっていることがある。
メキシコからアメリカへもの凄い量の麻薬が持ちこまれている、と言うこと。このことは、どうも正しい。

メキシコ政府、2006年に国内の麻薬カルテルに宣戦布告した。
それ以来、2014年までにメキシコで麻薬がらみの殺人で死んだ人、12万人であるそうだ。ケロッと言うが、凄まじい数である。

『[皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇』、シネマ・ヴァリテ、そのままの映画、ドキュメンタリーである。
監督はシャウル・シュワルツ。1974年イスラエル生まれ、1999年からはニューヨークに住むロバート・キャパ賞も受けているフォトジャーナリスト。
原題は、「Narco Cultura(麻薬文明)」、とでも言うべきもの。
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メキシコ、アメリカとの国境に近くシウダー・フアレスという街がある。
シウダー・フアレス、”世界で一番危険な街”、と言われているそうだ。
シウダー・フアレス、年間3000件という殺人事件が発生している、という。その多く、90パーセント以上の事件は放置されるそうだ。ヘタに首を突っこむと命が危ないんだ。

メキシコの麻薬カルテル、主要なものはこういうもの。
この作品の舞台・シウダー・フアレスを仕切っている組織は、紫色のフアレス・カルテル。

シウダー・フアレスでは、年間3000件以上の殺人事件が起こるんだ。
ヘロイン、コカイン、マリファナ、・・・、このような麻薬がらみの殺人事件が。
リチ・ソトと言う警察官が対応しているが、そのごく一部のみ。ヘタをすれば命が危ない。

日常の中に骸骨がいる。
メキシコ、そのようなところである。

すぐ近く、アメリカのエルパソには、ナルコ・コリードを歌うメキシコ系の若者がいる。
ナルコ・コリード、直訳すれば”麻薬の歌”である。

その舞台、手にはAK−47、肩にはバズーカ、というもの。
ナルコ・コリード、ラテンのリズムにのり、「邪魔するヤツは吹っ飛ばす。俺たちは血に飢えているんだ。殺しには目がないぜ」、と歌う。

多くの人が殺されて死に、、

多くの人が殺す。
フィクションではない。
シネマ・ヴァリテ・現実の物語、ノンフィクションである。