パプーシャの黒い瞳。

ロマ(ジプシー)の人々は、書き言葉を持たなかった。
そのロマ(ジプシー)の一族に生まれたひとりの少女がいる。ふとしたきっかけで文字を知り、惹かれていく。

『パプーシャの黒い瞳』、ポーランド映画である。
20世紀初めごろから第二次世界大戦前後の物語。ロマのひとりの少女が文字を覚え、書き、ある男に見いだされ、ロマ(ジプシー)初の女流詩人となっていく。
ポーランド、第二次世界大戦では手酷い被害を受けた。戦争終結後は、ソ連の影響下に組み入れられた。共産主義国家となった。そういう状況下でのロマ(ジプシー)。そのロマ(ジプシー)社会の中で、「文字を書く恥知らず」、とののしられる女の物語でもある。
モデルがいる。実話に基づいている、と言ってもいい。

”パプーシャ”、主人公の愛称である。”人形”、という意。
本名は、ブロニスワヴァ・ヴァイス。1908年か1910年に生まれ、1987年に死んだ実在の女性である。

パプーシャ、幼いころに文字というものがあることを知り、惹かれていく。

ポーランドに限らずロマ(ジプシー)の人たち、ヨーロッパ中にいる。
暫らく前までは、馬車であちこちを移動していた。
なお、このような移動手段でもあり、居住空間でもある馬車、日本では大阪の国立民族学博物館にその実物が展示されている。大きなものである。

1949年、共産体制下、秘密警察に追われている男がパプーシャたちのところに逃げこんでくる。作家で詩人でもある男。
ロマ(ジプシー)社会の言葉で言えば”ガジョ(よそ者)”である。
その男が、パプーシャの詩人としての素質を見抜く。

文字を持たなかったロマ(ジプシー)の人たち、音楽の才には長けていた。
なんとも言えぬ哀調を帯びたジプシー音楽。その旋律に酔いしれる。

ロマ(ジプシー)の人たちの馬車での移動の様、とても美しい。
ロングショットでのこのようなシーン、”ブリューゲル・フレーム”、と言うそうだ。ブリューゲルの絵に模して。
この映画、モノクローム映像である。
その白と黒の世界、美しいったらない。

パプーシャ、今、ポーランドの代表的な女流詩人のひとりとして知られている、と言う。


清原和博が保釈された。
44日ぶりに。清原、病院へ直行したそうだ。


その行方、昨年半ばから不明であった安田純平さんの映像がネットで流された。
安田純平、シリア北西部でアルカイダ系過激派・ヌスラ戦線に捕まっている模様である。ヌスラ戦線、アルカイダ系過激派である。しかし、斬首映像を流すISとは異なる立ち位置にいる。いわゆる有識者、殺されることはないだろう、と話している。
日本国政府は困っている、と思う。
身代金要求に応じるワケにはいかない。しかし、日本国民の生命は守らなきゃいけない、という板挟みに。