ノエル。

1週間少し前、封書が届いた。
封を切ると・・・

手触りのいいやわらかな和紙が折られたものが出てきた。
中ほどがほんのりと赤く見える。

開けると、Joyeux Noel の文字。
差出人は、河瀬和世。
河瀬さん、この春、横浜三渓園の旧燈明寺本堂で”縄文のいのり”を展開した和紙の作家である。
それにしても、しゃれたクリスマスカード。

この朱色、タンチョウかな。

今日、12月24日。ノエルである。
8年前のこの日、ロンドンにいた。
町中を歩いていたら、小さな教会の中から歌声が聴こえてきた。扉は開いている。中へ入った。20人ばかりの人たちが丸くなり歌を歌っていた。それを見ていた。と、年配の女性が手招きをする。近寄ると、私の肩を組み、「私たち、誰でも歓迎よ」、と言う。知らない歌ばかりで歌うことはできなかったが、しばらくの間、輪の中にいた。
英国であるからアングリカン・チャーチ、英国国教会であろう。その何らかの分派かもしれない。が、とても心地よかった。まだ”IS”という言葉を聞かないころのことである。
その1週間ほど前から、ロンドン中心部から少し外れたパディントンというところにいた。ヒースローからヒースロー・エキスプレスでノンストップ、アッという間に着く東京でいえば上野のような町である。
でも、上野ほど大きくはない町。町中の並木にささやかな電飾がついていた。このような。

その翌日、25日にはベルリンにいた。
その日のベルリン中心部、ウンター・デン・リンデンのイルミネーション。
地味な感じの電飾だ。

クリスマスが過ぎた後、28日のケルン大聖堂の一角。
小さな蝋燭があちこちに灯っていた。

その前年の12月24日、バンコクにいた。この年リタイアした。その後何年かの間、あちこちへ行っていたころ。この時期、バンコクへ行っていたんだ。
スカイトレインのプロームポーン駅を降りると、数十人のサンタさんが歌を歌っていた。南の国でもサンタさんがいる、ということを初めて知った。
12月24日を海外で迎えたのは、この2度だけである。

が、その少し後のころ、暮れから正月を海外で迎えたことは何度かある。パリではこの時期、正月を3度迎えた。
クリスマス前後のこの時期、さまざまな催しがもたれる。あちこちの教会で。
14年前、2001年のノートルダム前の広場に張られた大きなテントでは、このような催しが行われていた。
「ノートルダムのノエルのミステリー」という。3Dによるデジタル・オペラ。
イエス・キリストの生誕からのさまざまな物語。

”西洋の神聖な芸術の傑作を云々”というコーナーもあった。その折りのパンフを複写する。
左上から時計回りに、12世紀の彫刻家、Gislebert d'Autunの≪出エジプト≫。右上は、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの≪羊飼いの崇拝≫。その下は、ミレーの≪羊飼いの女≫。次いで、12世紀ロマネスク様式のサンイシドロ教会の≪羊飼いへの告知≫。右下は、シャガールの≪聖母子≫。そして左下は、16世紀イタリアのコレッジョの≪羊飼いの礼拝≫。
”羊飼い”が多く登場する。
神の子・イエスが誕生した時、羊飼いがその場に駆けつけたんだ。

何日か前の地下鉄六本木駅を出たところ。
小さな電飾がある。
同じ六本木でもけやき坂へ行ったり、表参道や丸の内仲通りあたりへ行けば華やかなイルミネーションが見られるのであろうが、私が今年見たイルミネーションはこれだけである。
それはそうとノエル。
今頃サンタさんは孫娘のところに行っていることであろう。どういうプレゼントを運んでいるのかは知らないが。
今の私のノエルは、常の日と同じ。
焼酎のお湯割りを飲みながらパソコンのキーを叩いている。