すべては対南アフリカ戦、3点ビハインド、ノーサイド間際の決断から始まった。

ラグビーW杯イングランド大会、今日の日本対アメリカ、1次リーグの最終試合である。
グループB、日本はここまで2勝1敗、このアメリカ戦に勝てば3勝となる。しかし、昨日スコットランドがサモアに勝ったため決勝トーナメントへの道は閉ざされた。
しかし、日本、W杯では1勝21敗2分。この24年間、勝ちはない。その日本が、いきなりW杯優勝2回の南アフリカを破った。サモアにも勝った。W杯では今まで2戦2敗のアメリカにも勝つだろう、という気になっている。
何故か。
すべては世界の強豪・南アフリカとのゲーム。フルタイム、ノーサイド直前、3点ビハインドの日本、南アフリカゴール前でペナルティーを得た。
どうする日本。
五郎丸のキック力なら、PGの成功する確率は8割を超える。強豪南アフリカと引き分けに持ちこめる。凄いことだ。しかし、日本のキャプテン、リーチマイケル、勝つ道を選択した。トライを取る選択を。凄いどころじゃない決断だ。
テレビ画面を見ていた私、身体が震えた。
W杯史上最大の番狂わせ、と言われることが起こった。ノーサイド間際のラストプレイ、日本は攻めて攻めて攻め抜いてトライをあげた。
すべては、そこ、南アフリカ戦ノーサイド間際の決断から始まった。

昨日晩くというか、今朝早くというか、NHK、3時前にラグビーW杯、日本対アメリカの中継を始めた。
試合開始まではまだ1時間以上あるが。

グループB、昨日までの成績。
昨日、スコットランドがサモアに勝ったため、今日日本が勝っても、勝ち点が及ばず決勝トーナメントへは進めなくなった。しかし、今日のゲームは勝っておくことが必要だ。4年後の日本でのW杯のためにも。

イングランド、グロスターからのライブ映像が入ってきた。キックオフまで、まだ1時間あるが。

3時40分ごろであったろうか、日本代表がひと塊りになって入ってきた。
キャプテンのリーチマイケルは、中央右。
真ん中で大男を引き連れ歩く身長166センチの小さな男は、田中史朗。田中史朗、世界最高峰のスーパーラグビーへ参戦している。日本が世界に誇るSH(スクラムハーフ)である。
左端に五郎丸歩がいて、右端に今日トライをあげた松島幸太朗がいる。リーチマイケルと田中史朗の間、横を向いているのはフォワード第1列フッカーの堀江翔太だ。
田中、五郎丸、堀江、この3人はキャプテンのリーチマイケルを支えるバイスキャプテン・副将である。
私の贔屓、日本歴代最多キャップを持つ大野均は、今日のメンバーから外れた。

ジャパンの先発メンバー。

アメリカの先発メンバー。

双方のリザーブの選手。
後半、ホラニ龍コリニアンに代わって出たレレィ・マフィ、トライをあげた。

この14番の選手は、今大会初先発の藤田慶和。五郎丸の後輩の早稲田の学生、ジャパンの最年少選手である。
藤田慶和、今日トライをあげた。

日本時間4時、アメリカのキックオフで試合が始まる。
すぐ後のファーストスクラム。
初めはアメリカが押していた。開始5分にはPGを決め、アメリカ3点を先制した。

6分すぎ、アメリカゴール前。
日本、攻めに攻める。

松島幸太朗、飛びこみトライ。

五郎丸のコンバージョンキックも決まり、日本、7対3とリードする。

トライをあげた松島幸太朗。
南アフリカ生まれの松島幸太朗、ヘアスタイルはアフリカ風。

23分すぎ、日本ゴール前、アメリカ押しこむが、日本、ゴールを割らせない。
しかたなくアメリカ、バックスへ回す。ひとり余った。

24分、ウィングのングウェニアが右隅に飛びこみトライ。
アメリカ、8対7と逆転する。

27分すぎ、アメリカゴール前、日本、モールを押す。

日本、巨漢ぞろいのアメリカを肉弾戦で圧倒する。
最後に飛びこみトライをあげたのは、ジャパン最年少の藤田慶和。

五郎丸のコンバージョンゴールも決まり、14対8。
この若者が、藤田慶和。

33分、五郎丸、PGを決める。

日本、17対8で前半を折りかえす。

後半が始まりすぐ、五郎丸PGを決め、20対8。日本、アメリカを突き離す。
その後、アメリカもPGを決め、20対11となる。

後半も半ばの60分、アメリカの1番プロップ・エリック・フライ、イエローカードを貰い、シンビンとなる。
これまでにも日本の対戦相手、何人もの選手が一時退場・シンビンを喰っている。いかに日本の攻撃が鋭く、ディフェンスが固いかが解かる。

今大会の日本、ラインアウトも強い。
61分、アメリカゴール前。ボールをきっちり取った日本、モールを組む間もなく押しこむ。

後半開始時、ナンバーエイトのホラニ龍コリニアンに代わり入ったレレィ・マフィ、飛びこみトライ。
五郎丸のコンバージョンゴールも決まり、25対11。2トライ2ゴール差となる。いいぞ。

71分、アメリカ、トライを返しコンバージョンゴールも決める。
これで25対18。1トライ1ゴール差となる。

キャプテンのリーチマイケル、檄を飛ばす。

77分、日本PGを得る。
五郎丸、今では日本中の小学生坊主が真似しているこのルーティンの後、PGを決めた。
これで28対18。時間帯から見て、日本の勝利は確実となった。

フルタイム・ノーサイドとなる。
五郎丸、このゲームの「マン・オブ・ザ・マッチ」に選ばれる。
それにしても、この長い髪を結わせたヒゲ面の男、アメエイカのセンターバックのパラモというラガーマン。タックルされてもなかなか倒れない。いやー、強い男であった。

グループBの最終結果。
3勝した国が決勝トーナメントに進めない、ということはW杯史上初とのこと。
日本、W杯史上、記憶に残る国となった。

エディジャパンが目指していたベスト8、こういう国となった。
順当と言えば順当だ。
しかし、スコットランドにさえ上手く対応しておけば、ジャパンもこの中に、との思いも拭いきれない。

すべてが終わった後のエディー・ジョーンズ。
これまでのW杯、1勝21敗2分のジャパンを、今大会だけで3勝を挙げさせた。ジャパンを変える、と言ったエディーの言葉通りとなった。
今日のゲームでエディーは去る。より大きな世界へ。南アフリカのチームの監督となる。3年契約、という。2019年には、W杯ジャパンである。3年後、またエディーがジャパンに戻っていること、その可能性はある。
それよりもである。
エディー・ジョーンズ、こう語っている。
「今回は、いいタレントが揃っていた。これが続くと思うのは甘い」、と。
それはどうあれ、それはそれ。
エディー・ジャパンの”Japan way”、暫しの夢を見せてくれた。
そのすべては、対南アフリカ戦、3点ビハインドのノーサイド間際の決断から始まった。