ノーサイド直前3点差、ペナルティーゴールを狙わずトライを取りにいった選択には、震えた。

「南アフリカの練習試合にはさせない」、日本のヘッドコーチ、エディー・ジョーンズは、試合の前そう語っていた。
調整のための練習試合の相手に日本のイレブンが使われるのなどまっぴらごめん、との心意気であった。一矢報いてやる、との意気込みである。
それが、まさか、こういう結果になることなど、エディー・ジョーンズHCの頭の中にはなかったであろう。
日本中が驚いた。世界中がびっくりしている。
何よりも、後半40分を過ぎ、日本は3点ビハインド、あとワンプレイでノーサイドという場面。ここで、入れば同点引き分けとなるペナルティーゴールを狙わず、トライを取りにいった選択には、震えがきた。世界ランク3位、優勝候補の南アフリカを相手にしてだ。
南アフリカと引き分けても大ニュースなのに、勝ちにいった。
この選択、驚天動地。身体が震えて当然だ。
昨日、ガブリエル・オロスコ展のことを記そう、と思っていた。その前に、立憲主義を踏みにじった安倍晋三による解釈改憲の非を記そう、と考えた。その内に、NHKの画面、ラグビーW杯の日本の初戦の前振りが始まった。

昨夜半のNHK。
ラグビーW杯、イングランド大会が始まる。

日本はグループB。
なお、世界ランクは、南アフリカは3位、スコットランドは10位、サモアは12位、アメリカは15位、日本は13位である。
ラグビーの世界、トップ8とそれ以下の力の差はべらぼうに大きい、と言われている。トップ8とそれ以下では、完全にレベルが違う、と。

今回のジャパン、最強のジャパン、と言われている。

日本のヘッドコーチ・名将エディー・ジョーンズ、こう語る。

キャプテンのリーチマイケル、こう語る。
「日本人らしく・・・」、と。
ニュージーランド出身のリーチマイケル、15歳で日本へ来て10年余、東海大を出、日本国籍を取得した日本人である。

私が秘かなファンである歴代最多キャップを誇る大野均は、こう語る。

日本の先発メンバー。

先制したのは、日本であった。
8分、五郎丸がペナルティーゴールを決めた。

日本、3対0という状況が続く。

日本、強国南アフリカを相手に、一歩も引かない戦いを続ける。
が、南アフリカにトライを挙げられコンバージョンゴールも決められる。

3対7、逆転された。

日本、強豪南アフリカ相手に、互角の勝負を挑んでいる。
攻めこむ。

29分すぎ、リーチマイケル、トライを挙げる。
五郎丸のコンバージョンゴールも成功、日本、8対7と逆転する。

日本のキャプテン・リーチマイケル。
さすがキャプテンというトライを挙げた。

10対12、日本、2点ビハインドで前半を終える。
大健闘。

後半、日本は近くのことごとに。

日本、過去7回のW杯、すべて1次リーグ敗退である。
W杯での戦績、1勝21敗、2引き分け。その1勝は24年前。それ以来、W杯ではひとつも勝っていない。
左下のハンドリングエラーを見てもらいたい。日本は、ほとんどエラーをしていない。

いったい誰が、強豪南アフリカを相手に日本が、このような試合をすると思っていたであろうか。

五郎丸、ペナルティーゴールを決める。

五郎丸、またしてもペナルティーゴールを決める。

後半も半ばをすぎ、22対22。

南アフリカ、W杯では2度優勝している。
1回目と2回目は、南アフリカのアパルトヘイト政策で出場できなかった。

後半29分すぎ、五郎丸のトライが生まれる。
コンバージョンゴールもなる。29対27。
日本、南アフリカに離されても、すぐに追いつく。しぶとい。南アフリカは焦る。
南アフリカ、日本ゴール前でペナルティーを得るも、トライを狙わずペナルティーゴールを選択する。南アフリカ、弱気になっている。

日本は、強気だ。
強豪・南アフリカに対し、ドライビングモールをしかけている。考えられない状況が生じている。
日本、モールを押しこむ。トライか。
TMOとなる。トライ、イエスかノーか、ビデオ判定となる。
残念、トライとは認められなかった。

が、日本は攻める。
時間はノーサイド直前である。
攻める。トライを取りにいく。強豪・南アフリカ相手に。

左右へ展開したボール、最後は途中出場のK.ヘスケスが左隅へ飛びこんだ。
トライ。
日本、逆転で南アフリカを破る。
五郎丸のコンバージョンゴールは失敗したが、日本、優勝候補の南アフリカを破る。

34対32。
誰がこのスコアを予想したであろうか。各国のメディアが、この驚愕の顛末を報じている。

残りワンプレイで勝ちにいく選択をしたジャパンの決断に、大いなる賛同を記す。