今を生きるNIPPON。

人間国宝に認定された人は、暫くの間はこそばゆい感じじゃないのかなー。
普通に飯を食ったりトイレに行ったりしているのに、ある時突然、貴方を国宝に認定します、と言われるのだから。
重要無形文化財の保持者である人間国宝、芸能分野では歌舞伎、文楽、舞踊など8種別、工芸技術分野では陶芸、染織、漆芸など9種別から選ばれる。玉三郎のように60少しで認定されるケースもあるが、それは稀。概ね功成り名遂げた大御所たちである。
当然であろう。永年の修練あってこその国宝なのだから。

人間国宝展、「生み出された美、伝えゆくわざ」と惹句にある。

平成館の階段下。
東博、「日本美術の祭典」というタイトルの下に、二つの特別展を催した。
クリーブランド美術館展には”帰ってきたNIPPON”、人間国宝展には”今を生きるNIPPON”というキャッチをふった。しかし、ハッキリと言えばずいぶん無理がある。対にすることなど何もない。
そうは言っても、対になっている企画の片方だけでは、何となく気が収まらない。で、2月に入りソチ五輪が始まっていたのだが、観に行った。
物故者も含め、人間国宝104人の作品が展示されていた。また、火炎土器や銘広沢の志野茶碗などの国宝、重文となっている古典の名宝も。

左は、陶芸、三代目徳田八十吉作の耀彩壺≪恒河≫。彩釉磁器である。光り輝き美しい。
真ん中は、平田郷陽作の衣装人形≪抱擁≫。この母子像、何と言えばいい? 赤子とお母さんって、こういうものだよね。
右は、生野祥雲斎作の竹華器≪怒濤≫。よくぞこのように美しく、という竹芸。

陶芸、松井康成作の練上嘯裂茜手大壷≪深山紅≫。
「嘯裂」とは、表面にできる細かな亀裂のことだそうだ。松井康成が独自に切り拓いた練上表現のひとつである、という。たしかに、ひとつの極みであろう。

稲垣稔次郎作≪木綿地型絵染 野草笹匹田模様着物≫。
<稲垣は・・・・・複数の型紙を組み合わせて、着物に絵画的なデザインを構成する「型絵染」を生み出しました>、と東博ニュースにある。
安土桃山から江戸期、その華やかなる時代のエッセンスをも取り組んでいる模様。