金より名。

遅く帰ってきたり、終日家にいても夕方から飲みだし、いつの間にかビールが焼酎に変わってボウとなったりで、ブログ3日間お休みにしました。が、また映画に戻ります。

ロンドンに住まいするメディア王・シャバンディーの雇われ鑑定士・ハリー、雇い主からコケにされたことから、その復讐を考えるんだ。
”モネの贋作を売りつけてやろう。とびきりの高値で”、と。相棒がいる。その絵の持ち主である。
何とその相棒、テキサスのカウガール。カウガールってのは、カウボーイの女版。テンガロンハットを被った元気印のオネーちゃん。

カタブツの美術鑑定士・ハリーに扮するのは、コリン・ファース。『英国王のスピーチ』で愚直な英国王を演じ、アカデミー賞の主演男優賞を取ったコリン・ファース。『モネ・ゲーム』でも同様、カタブツ。
相棒のモネの絵の持ち主・テキサスのカウガール・PJに扮するのは、キャメロン・ディアス。ロンドンでジーパンにテンガロンハットのヤンキー、キャメロン・ディアスにピタリ。
で、メディア王・シャバンダーに扮するのは、アラン・リックマン。億万長者であり、ヘンな趣味の持ち主でもあり、テキサスのカウガールにもころりと参ってしまう。憎めない。
脚本は、コーエン兄弟。あの『ノーカントリー』のコーエン兄弟である。
監督は、マイケル・ホフマン。
ライオンも出てくる。高価な美術品を守るセキュリティー。

チラシの惹句の如く、極上のエンタテインメント作。”美術界最大のミステリー!?”かどうかは、別にして。
カタブツの美術鑑定士・ハリーから、「大金が稼げるぞ、やるか?」と相棒に誘われたカウガール・PJの答えがよかった。
短かくひと言。「イェイ」。
この『モネ・ゲーム』、今からは3か月近く前に観たもの。その細部は、朧げになっているところもある。何とか救いはあるようだが、その結末も。
いや、日本人が出てくるんだ。6〜7人のグループで。金は持っているが、オツムはちょっと、という日本人たち。ステレオタイプの日本人像には違いない。恥ずかしい思いがある。バブルの頃の日本人。終わりに救いはあるようだが。
”なぜ、盗めない!?”のモネ、『積みわら』。
この作品、シカゴのアートインスティチュートにある『積みわら 夏の終わり』である。
シカゴのアートインスティチュート、日本ではシカゴ美術館とされていることが多いが、正確に言えば”アートインスティチュート・オブ・シカゴ”、素晴らしい美術館である。ニューヨークのメトロポリタンに次ぐ、世界的な美術館である。20年ぐらい前であるが、私は二度訪れた。
いずれの時も、アートインスティチュートの書を求めているが、二度目、1994年に訪れた折りに求めた”エッセンシャル・ガイド本”から複写する。モネの『積みわら 夏の終わり』を。

モネの『積みわら』の連作は30点ほどある。その内、もっとも多く所蔵するのがシカゴのアートインスティチュート。6点を所蔵する。
左のタイトルは『積みわら』。右のタイトルは『積みわら 夏の終わり』。
シカゴのアートインスティチュートにあるこの『積みわら 夏の終わり』、どうして『モネ・ゲーム』の主題に、贋作を用いた詐欺事件に用いられたのか、不思議。
それはそれとし、アートインスティチュートで求めたエッセンシャル・ガイドには、『積みわら 夏の終わり』について、”同じ主題で描いたのは・・・・・”、といったことも記されているが、この作品が、”1985年に、ポーリーン・パルマー・ウッドを偲んで、アーサー・M・ウッドから寄贈された”、と記されている。実は、左の『積みわら』も寄贈された作品。
アメリカという国、持てる者は社会に還元する。素晴らしい。アメリカの美術館の収蔵品の多くは寄贈品で成り立っている。
全世界に30数点しかないフェルメールの作品を最も多く所蔵するのは、ニューヨークのメトロポリタン美術館である。30数点の内5点を所蔵している。フェルメールの母国・オランダのアムステルダム国立美術館でも4点しか所蔵していない、というのに。
メトロポリタン、いや、アメリカの凄さは、その物量ばかりじゃない。社会還元の意識の問題である。
メトロポリタンが所蔵する5点のフェルメール、そのすべてが寄贈、遺贈されたものである、ということ。5人が5人とも、事業で成功し、巨万の富を築いた人たちである。
金を得た彼ら、その金を名を残すことに転化することに努める。
顧みて思う。バブル期、大昭和製紙の会長がゴッホやルノワールの作品を落札した。それぞれ百数十億という金額で。
斎藤何某というその人、「オレが死んだら、棺桶の中にゴッホの作品を入れてくれ」、と言った。世界中からブーイングを浴びた。
金があっても何にもならない。そのような人は社会貢献を考えなきゃ。その程度はさまざまでも。
桁違いの金を持っている人は、アメリカ人の桁違いな金持ちを真似るがいい。金より名を残すことを。
金より名、私たち庶民には難しい問題もあるが、、そこそこの人はそうでなきゃって考えねばな。『モネ・ゲーム』を観て。
そうだ。『モネ・ゲーム』ってタイトルもシャレていた。原題の《GAMBIT》よりは。
”策略、計略”なんて、もろそのまま。粋じゃないよ。