日本ファッションの未来性はありや。

電化製品なんかは、サムスンに任しときゃいい。軍備増強なんてことは、中国が勝手にやりゃあいい。日本はこれだ、ということが幾つもある。そのひとつが、ファッションであろう。
MOT・東京都現代美術館で、「日本ファッションの未来性」展が開かれた。何やかや他のことに取り紛れ、取り上げるのが遅れたが、先月始めの頃。

1980年代から現在まで、約30年の日本ファッション。その過去30年を鳥瞰し、その未来性を考える、というものである。
既にロンドンとミュンヘンで開かれた「Future Beauty:30Years of Japanese Fashion」の東京展。
展示は、大きく4つのパートで構成される。
1.陰翳礼讃、2.平面性、3。伝統と革新、4.日常にひそむ物語、の4つ。
何と言っても、迫力があるのは、会場に入って初っぱなにある、川久保玲と山本耀司の作品である。陰翳礼讃だ。”黒いボロ”、と呼ばれた黒を多用したモノトーンの階調のファッション。
白っぽいものもある。その底に流れるテーゼは、無彩色。
ヨーロッパ、特にパリには、1970年代、高田賢三や三宅一生が先鞭をつけた。その後、1981年、山本耀司とコム デ ギャルソンの川久保玲、パリで初コレクションを開く。
1983年春夏のパリ・コレクション、山本耀司と川久保玲は、共に無彩色でボロボロな服を発表する。欧米のファッション業界に衝撃を与える。世界にセンセーションを巻き起こす。世界の山本耀司、世界の川久保玲、となっていく。
いずれにしろ、”陰翳礼讃”のパート、圧巻であった。
2.の”平面性”は、三宅一生の「プリーツ プリーズ」始め、日本人デザイナーの作品には多い。
3.の”伝統と革新”も、デザインにしろ素材にしろ、よく解かる。4.の”日常にひそむ物語”は、90年代以降のアニメなどのサブカルと関連するものや、それとは逆に服作りに真摯に向きあおうという流れ。
全体で、40人近いデザイナーの作品が展示された。

会場へ入る前の廊下に、このようなものが貼ってある。
1960年から2011年まで、約50年間のファッションの流れ、それぞれの年の特記事項が記されている。
なお、この写真の後ろ姿の人、髪を結いあげ、両耳にピアスをしている人、男の子。このような展覧会へ来る人、男の子もファッショナブルなんだ。
それはともあれ、ここ50年間のファッションの流れ、気づいたところだけ記しておこう。作品の写真は撮れないので、ポスターの写真の一部を取り出して。

1960年、 ジーンズ流行。ただ一行、これだけ。
1961年、資生堂、サンオイル発売。シームレスストッキング流行。
1962年、ボーイッシュルック流行。この頃、マリー・クワントがミニスカート発表。
      しかし、日本でミニスカートが大流行したのは、1966年、ツイッギーが来日した年である。

1970年、高田賢三、パリに「ジャングル・ジャップ」開店。作品が、エル誌の表紙を飾る。
      三宅一生、三宅デザイン事務所設立。Tシャツにノーブラ、ウーマンリブのデモが起こった年。
1971年、三宅一生、ニューヨークでコレクション発表。
      山本寛斎、ロンドンで日本人初のコレクション発表。

1973年、三宅一生、パリ・コレクションに初参加。
      川久保玲、コム デ ギャルソン設立。
1975年、川久保玲、東京で初コレクション。
1977年、三宅一生、「一枚の布」発表。
1981年、山本耀司、川久保玲、パリで初コレクション。

1982年、コム デ ギャルソン、パリにブティックを開店。
      山本耀司、川久保玲、パリ・コレクションで「ジャパン・ショック」を西欧のメディアに巻き起こす。
      この年、日本人デザイナーによる海外でのコレクションが盛んになる。高田賢三、三宅一生、川久保玲、山本耀司、やまもと寛斎、鳥居ユキ、芦田淳、コシノ・ヒロコ、コシノ・ジュンコ、島田順子等。
1983年、山本耀司、パリにブティックを開店。
三宅一生という先達はいたが、この30年、世界のファッション・デザインの世界で中央突破を計ってきたのは、川久保玲と山本耀司の二人であろう。世界に冠たる二人である。

MOTの踊り場のところで、ビデオが流されていた。コム デ ギャルソンの川久保玲と山本耀司、それに三宅一生の。世界の3人だ。
これは、川久保玲。
ここでの川久保玲、「したがって、私たちは、私が考えているスタイルを作り出します」、というようなことを言っている。川久保玲、この前に、ボリュームやラインのことを言っていたんだ。で、”したがって”、ときた。

会場前の廊下に貼ってあるこの50年間のファッションの流れ、最後は、2011年である。こういうことが書いてある。
2011年、ヴィクトリア&アルバート美術館にて、「ヨウジ・ヤマモト」展開催、と。
この1983年春夏コレクションで発表された上の写真のドレスも、展示されたであろう。
ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館、格式の高い美術館である。そこで、ヨウジ・ヤマモト、山本耀司の展覧会が開かれたのだ。日本人は、誇りに思わなくちゃ。
そして、改めて思う。
過去30年はいい。これからの30年はどうか、と。
未来は、ありや、と考える。