諸国漫遊だ。 石田宏 スケッチ展。

3日前は、とても中身の濃い日であった。
池袋ジュンク堂での「どうぶつ社の36年」へ行った後、市ヶ谷へ行った。ジュンク堂の主役・久木亮一を含め、今度は9人で。やはり仲間のひとり、石田宏のスケッチ展を観るために。会場は、市ヶ谷のビストロ・カシーヌ。フレンチの洒落たレストラン。
タイトルは、「石田宏 スケッチ展  津軽半島・陸前海岸・奥能登・甲州・信州大北・浅草・千住・ボヘミア・中国江南」、というもの。
石田宏の作品については、昨年秋の私たちの仲間のグループ展の時にも触れた。そのテクニックの凄さを。美研じゃなく漫研にいたんじゃないか、アイツ、と。さまざまな人の表情を瞬時に捉える、瞬間芸とも言えるその技に。
今回のスケッチ展では、その対象は人間というより場所である。石田宏、あちこちを漂い歩いている。まるで、”諸国漫遊”だ。水戸黄門だ。
印籠の代わりに、ボールペンを持って漫遊している。上手いもんだ。
その土地土地の香りが漂う漫遊の模様、観てみよう。
先ずは、昨年3月11日、未曾有の大災害に見舞われた東北、陸前海岸から。

陸前海岸、2枚のパネルに42点の彩色画が貼られている。
大船渡、気仙沼、志津川、雄勝、石巻、塩釜、・・・、・・・。陸前海岸の町々、大津波にすべて飲みこまれてしまった。
石田宏、「これは、あの大震災の前の陸前海岸。こうであった」、と話す。

大船渡である。
今年初めのブログに、岩手県の沿岸部へ行ったことを書いた。大船渡のことも。大船渡、すっかり流されていた。1年近く経った今年初めでも、鉄骨のみが残るガレキの町であった。
実は、石田宏のスケッチ展を観て帰る折り、石田からA4、20枚余のコピーを綴じたものを渡された。何と、石田が描いた町のことが記されている。それを読んでみると面白い。とても勉強になるんだ。その町の”キモ”といったことが、記されているのだから。
例えば、ここに描かれた大船渡については、こうである。
<・・・・・。大船渡地区の茶屋前は木造家屋が立ち並ぶ古い街、気仙大工の手になる精巧なつくりの家屋も数多く存在していたが、東日本大震災で跡形もなく消えてしまった>、と石田は記す。

盛だ。
今年1月、釜石からバスに乗り、盛で降りた。ここで気仙沼の方へ行くバスに乗り換えるため。朝、早い時間であった。雪が舞っていた。寒かった。何か暖かいものを飲みたいが、周りに何もなかった。ドトールやマックも、コンビニも、自販機さえもなかった。
何時間か、雪の中でバスを待った。バス停で、「大津波で親父もお袋も死んだ」、という人と話した。その盛である。盛に、ハリストス正教会があるなんてこと、まったく知らなかった。

鮪立、気仙沼、志津川、・・・。
石田宏の手になる20枚余のコピーを綴じたもの、勉強になる。気仙沼については、こう記されている。
<甞は近隣の山地で金が取れ、その積出し港、海の玄関口として町は発展した。大正期に火事があり、・・・・・。男山酒造と蔵元角星の店は東日本大震災で壊滅したが、幸い酒蔵はやや高台に位置していて、・・・・・>、と石田。
石田宏、ベラボーな酒飲み。酒のことには、やけに詳しい。
これらの町々も、みなすべて大津波に流された。多くの人が死んだ。

これは、津軽半島。
木造、金木。右端は、太宰治の生家。今は、”斜陽館”とは言わないそうだ。これも、石田宏のページ物からの情報だ。

これも、津軽半島。
十三、稲垣、車力。石田宏のページ物でお勉強をしよう。こうである。
<十三は今、ジュウサンと読むが昔はトサと読んだ。古くに日本7港の一つに数えられた町で、江戸期には材木や米の積出港として賑わったという。今は侘しい田舎町である。・・・・・>、と石田は書く。
十三港というより十三湖、行ったことがある。
今は、犬がいるので、カミさんと一緒の旅行なんて、まあしないが、遥か昔、結婚する前にはあちこちへよく行っていた。5月の連休の時だったろうか、津軽へも行った。金木からだったかどうか、バスで小泊まで行った。
津軽半島の町々、潮風に晒された板塀の風情、何とも言えぬ趣きがあった。30何年も前のこと。いや、40年にもなる頃か。遥か昔のことである。

津軽半島、これは、竜飛と三厩。
石田によると、<岬は「津軽海峡冬景色」で有名になった。展望台に上がると拡声器から「二番」の歌詞が流れる。「二番」に「竜飛岬」が登場するのである>、と。
     ごらんあれが竜飛岬 北のはずれと
     見知らぬ人が 指をさす
     ・・・・・
     ・・・・・
作詞:阿久悠、歌うは石川さゆりの名曲だ。
10数年前、冬のこと、おそらく正月休みに東北へ行った。弘前や五所川原へ行った後、津軽半島へ行った。津軽半島のJRの終点が三厩であった。竜飛岬へはここからであるが、冬の間にはそのようなことはできない。
三厩で降り、帰りの電車を待った。2、3時間はない。雪も舞っている。寒い。
駅前に通りがある。向うの方に、ボウーと灯がついている所があった。その店に入った。バーと居酒屋を合体したような店だった。その店で酒を飲み、暖をとった。

これは、奥能登。
パネル3枚に、44点のスケッチ画が貼りつけられている。輪島、珠洲、能登、穴水の奥能登の風景。付け根の金澤には行っているが、奥能登には行っていない。だからか、イマイチという感じになってしまう。申しわけなし。

甲州。
パネル3枚に55点のスケッチ。
[
信州大北の雪景色。
雪深い北信州の光景である。信州大北、大町や白馬のあたり。40年ほど前、白馬の八方尾根のスキー場へ行ったことを思い出す。
石田宏の作品、まだある。
続きは明日とする。