キッチュ。

小泉純一郎は、その印象を「快活な感じを受けた。独裁者や暗いというイメージはなかった」、と言っている。そりゃそうだろう。ニッコリ笑って人を斬る、というような男でなければ独裁者失格だ。その資格を充分すぎるほど持ち合せた男であった。
当時の韓国大統領・全斗煥の一行を狙った1983年のラングーン、アウンサン廟爆破事件、87年の大韓航空機爆破事件、さらに、日本国が認定しているだけでも17件、実際にははるかに多くの拉致事件。金正日なくしては、あり得なかった事件ばかり。数々の悪事を働いた男が死んだ。
多くの国民が飢えている。だが、国は、つまり、金正日は、核兵器とミサイルを作ることに血道を上げた。核とミサイルをカードに使い、食料、エネルギーの支援を得よう、という狙いは解かる。瀬戸際外交、弱者が取引をする時の常道だ。しかし、先軍政治なるもの、不思議なものだ。一旦進むと引き返せない。かけ違えたボタンを直すことができない。バカなことの連鎖となる。
北朝鮮、バカなことにバカなことを重ね合わせることを続けている。昨年9月に登場した金正日の息子・金正恩をトップに押しだしたこともそう。まだ30前の男。28か29歳かも知られていない。そうせざるを得なかった。権力の継承期間が短かったにせよ。社会主義を唱える国にして、3代続けての世襲。まあ、何百年か時代を遡った国、と考えたほうがいいかもしれない。その国民は迷惑ではあろうが。
その国民は、北朝鮮が流す映像で見ると、皆さん号泣している。声を震わせ、拳であちこちを叩いている。芝居を観ているよう。それとも、号泣している人たちは、飢えとは関係がなく、食えている人たちなのか。都市部のごく一部の。キッチュな映像。
先ほど、金正日の遺体、防腐処理をされ何とか宮殿に安置された映像が流れた。金正恩を真ん中に北朝鮮の党、軍の幹部が並んでいた。かけ違えたボタンを直さないまま、皆さんはどこまで行くつもりなのか、ということを考える。30にもならない金正恩を担いで。成算のない道であることは解かっているはずなのに。
ホント、どこまで行くつもりなんだろう。北朝鮮には、頭のあるヤツはいないのか。いないとすれば、あとは胡錦濤と来年からの習近平の出番だろう。北京の北朝鮮大使館へ弔問へ行くぐらいではすまない。指導しなきゃ、胡錦濤と習近平。アジアの盟主でしょ、中国は。
そうでなきゃ、糸の切れた凧・北朝鮮、どこまで行くのか解かったものじゃない。全てのものごとがキッチュ。