不意打ち。

10年前の9.11、アメリカにとっては、不意打ちだった。
70年前の12月8日、日本によるパールハーバーへの不意打ち攻撃と同様の。国家に対する不意打ち攻撃。アルカイダ、70年前の日本と同じく、打ち潰すべき卑怯な敵となった。
昨日、10年前の9.11、WTCが崩壊する現場を伝える、CNNのビデオを見ていた。刻一刻、現場の状況を伝えるレポーター、1941年の日本によるパールハーバーへの攻撃・・・・・、と引きつった声で伝えている。アメリカという国、また、アメリカ人、パールハーバー以来の明確な敵を意識した。
冷戦時代のソ連も、アメリカの明確な敵ではあった。しかし、それは体制上の敵。それに較べ、パールハーバーと9.11は、皮膚感覚での敵。いきなりガツンと頭を殴られた。その痛み、全身に沁みわたる。皮膚感覚の敵、憎いどころではなくなる。こうなった時のアメリカ、突っ走る。直接の敵・アルカイダばかりでなく、アフガンやイラクへも。
昨日触れたアルジャジーラのコリン・パウエルへのインタビュー、コリン・パウエル、ガセネタを信じたことを悔いているのだが、こういうことも言っている。
2003年、イラク攻撃を始めて以来、アメリカ兵の死者は4792人を数える。この間、アメリカは8690億ドルという巨額の戦費を投じてきた。今なお、米兵一人当たり、1年間に80万ドル強のコストがかかっている、と。
アメリカ、サダム・フセインは倒した。しかし、サダム・フセイン、アルカイダとの関係はなかった。大量破壊兵器もなかった。イラクでは、アメリカへの憎悪のみが残っている。それ以上に、膨大な戦費を費消したアメリカ、国力が落ちた。今なお、ダントツ1位ではあるが、やはり、落ちた。
アフガンでも、アメリカ大変だ。
オサマ・ビンラディンを匿い、引き渡しを拒否したタリバーン政権は、倒した。今年になり、ビンラディンを殺害したが、出口が見えているとは言えない。イラクとアフガンに投じたアメリカの戦費は、合計1兆3000億ドルとなる。アメリカ兵の死者は、合計6000人を超える。それ以上に、イラクとアフガンでの死者は、すべて合わせ22万人をこえている、という。その多くは、一般の人。
しかし、アメリカという国、何があってもUSAだ。
昨日、NHKが流したABCの中継映像から、何枚か。

昨日のグラウンド・ゼロ。

デカい星条旗。アメリカだな。

昨日のグラウンド・ゼロでのオバマ。
オバマ、この後ワシントンへ飛び、イラク、アフガンからの出口戦略、今後についての演説をする。聖書の言葉を引いて。アメリカの強さは、平和の未来へ向かうことで生れる、とも。
さらに、アメリカは、イスラム教にも、どの宗教にも戦争を仕掛けない、とも述べる。
しかし、オバマが何と言おうと、アメリカの実態は、それとは逆の方へいっている。大らかなアメリカ、寛容のアメリカとはほど遠い方向へ。ティーパーティーの連中はじめ、多くのアメリカ人が。心の広いアメリカ人は、ごく少数派になっている。アメリカ好きとしては、哀しいよ。
ところで、2〜3日前のAl Jazeeraに、こういう映像があった。

グァンタナモだか何処だかは解からない。だが、キャプションには、こうある。「文明の衝突」、と。
Al Jazeeraのウェブサイト、時折り覗くが面白い。もちろん、イスラム圏に特化しているが、その時々の出来事、何でもかんでも扱っている。朝毎読と昔の東スポ(暫らく見ないが、今でも変わらないであろう)を合わせたようなもの。
だから、この写真に「文明の衝突」なんてキャプションをつけている。その感覚、東スポ的だ。
サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」、今では、あまり使われない言葉である。いや、むしろ、避けて通る言葉である。オバマならずとも、気を使っている。
しかし、今の世界、イスラム圏の人たちにとっては、「文明の衝突」と映ること、現実であるのだろう。
不意打ちを食らったアメリカが、シャカリキになればなるほど。如何にオバマが気を使おうとも。